【 豊国酒造 】 若き杜氏の覚悟宿す<古殿町>

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新酒の出来を確かめる矢内さん=古殿町・豊国酒造

 中通りといわき市を結ぶ「御斎所街道」沿いにある豊国酒造(古殿町)。築100年を超える酒蔵は、かつて宿場町として栄えた街並みの面影を残す。伝統を引き継ぐのは9代目の矢内賢征さん(30)。「この地でしかできない酒を」と地酒造りのこだわりを語る。

 代表銘柄の一つが大吟醸「幻(げん)」。華やかな香りと甘みが特徴だが、切れが良く、くどさを感じさせない。矢内さんが師と仰ぐ南部杜氏(とうじ)から受け継いだ大切な酒だ。

 矢内さんが初めて幻を仕込んだのは4年前。味を守れるか不安だったが、全国新酒鑑評会で連続金賞を引き継ぐなど順調に移行できた。しかし、9年まで伸ばした連続金賞は今年で途切れた。鑑評会のための酒造りではないが、やはり悔しさもある。それでも「新しいことをやらなければならないと思うきっかけになった」と前を向く言葉が、新酒を一層楽しみにさせる。

 伝統を守る一方で挑戦もしてきた。2011(平成23)年に発表した「一歩己(いぶき)」。「一歩ずつ着実に前に」と、杜氏として歩む自身の覚悟を重ねた酒だ。甘み、香りのバランスが良く角のない味わいは、ほのかな苦みで輪郭をつくっているというから奥深い。今では蔵の新たな顔となった。

 「地域の人に喜んでもらえるように、酒蔵として地域の誇りでありたい」と矢内さん。若き杜氏の熱い思いに、父で代表社員の定紀さん(65)=写真・下=も頼もしく感じながら背中を押す。支える従業員の雰囲気も明るい。さらなる成長へ躍動する蔵に思えた。









 幅広い料理調和する味
 創業は江戸時代の天保年間で180年以上の歴史と伝統を誇る。御斎所街道が通る古殿町には海と山の物の交易所として栄えた「荷市場」があり、江戸時代まで盛んに市が開かれていた。この地域性もあって、自然と酒の味わいも幅広い料理に調和するものになったと考えられるという。代表銘柄は幻、一歩己のほか、うま味の乗った純米酒「超」、地元で昔から飲み継がれる柔らかな味わいの普通酒「東豊国」など。豊国酒造(電話)0247・53・2001