危機乗り越え「初しぼり」販売開始 3月地震で被災、金水晶酒造店

 
瓶詰めされた「初しぼり」を化粧箱に入れる斎藤社長

 金水晶酒造店(福島県福島市)は今月から、新酒「初しぼり」の販売を開始した。本県沖を震源とした3月の地震で被災し、今冬は酒造りの継続が危ぶまれていた。斎藤美幸社長は「絶望的な状況から何とかここまで来た。課題も残っているが、蔵人(従業員)と力を合わせて乗り越えたい」と力を込める。

 蔵は建物全体が被害を受け、柱と柱の間に木材を斜めに渡す「筋交い」を入れて補強した。酒造りの設備は、自動圧搾機が損傷し、もろみを搾る工程で生産量が通常より減ってしまう。瓶を洗浄する機械は不具合で頻繁に止まり、瓶詰めラインは段差ができてスムーズに動かない。それでも、従業員が手作業で補いながら酒造りを続けている。

 初しぼりは純米生酒で、華やかな香りが口の中に広がり、まろやかなうま味や爽やかなほろ苦さが特長の新酒に仕上がったという。県内の酒店などが取り扱い、4合瓶は1573円で900本、1升瓶は2904円で750本をそれぞれ販売する。

 今後、来年の全国新酒鑑評会に出品する大吟醸酒などの仕込み作業が本格化する。金水晶酒造店は鑑評会の金賞受賞の常連でもあり、斎藤社長は「初しぼりを出荷し、大吟醸酒を造る準備が整いつつある。度重なる地震や新型コロナウイルスの影響を受けながらも、前を向いて頑張る姿を見せたい」と表情を引き締める。