口の中の感覚

 

 繊細で鋭いセンサー分布

 口腔(こうくう)内の感覚は、髪の毛1本でも異物と感じ取るほど繊細です。口腔内の状況をなるべく早く、正確に判断するため、感覚の鋭いセンサーが分布しています。

 食べ物を摂取することは、活動するためのエネルギーや体を作る栄養を取り込むため毎日欠かさず行う大切な行為です。

 しかし、食べ物自体は味、食感などさまざまな特色があり、体にとっては良くないものを取り込んでしまう可能性も持っています。体の中に入ろうとする食べ物を、視覚、嗅覚(きゅうかく)、触覚、温度感覚、聴覚など複合的に安全か危険か判断し、もし食べ物がひどく見た目が悪かったり嫌なにおいがすれば、口に入れません。食べ物の入り口となる口とその周囲には多くの感覚器官が集中し、食べ物の性質を十分に確認することを可能にしています。口腔内の大きさは体全体からみればとても小さいものですが、口で感じる食感や温度感覚は、人間にとってとても大切なことです。

 口腔内のセンサーの一つに、歯の根元と骨の間に存在する歯根膜という部位があります。これは食べ物を食べたときに咬合力(こうごうりょく)が直接骨に伝わらないようにするため、ショックを吸収するトランポリンのような役目をしています。この歯根膜の感覚が鋭いことにより、食べ物の硬さや食感を感じ取ることができます。もしも歯を抜いた場合、歯根膜は一緒になくなり、センサーが少なくなってしまうことにより、かんだ感覚が衰えてしまいます。入れ歯を使用すると食感が変わってしまう大きな理由はこのためです。

 歯を失わないようにすることはこういった感覚からみても重要です。歯をなるべく失わないように、また、おいしく食べられるようにプラークコントロールを大切にしましょう。

(県歯科医師会)