脳卒中について。その9

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。今回から公立藤田総合病院(国見町)副院長の佐藤昌宏先生が担当します。
脳卒中について。その9
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

      

 今回も前回に引き続き、脳卒中の予防についてお話します。

 8.体力にあった運動続けよう

 脳卒中の予防には、正しい生活習慣の積み重ねが必要です。これまで述べてきたように喫煙、大量飲酒、肥満が脳卒中の引き金になるほかに、運動不足もその一つです。適度な運動を継続することで肥満、高血圧、脂質異常症の発症を抑えることができ、さらには心肺機能の低下を防げます。ただし、過激な運動や寒暖の激しいところでの急な運動は、血圧を上昇させるほか、脳卒中や心筋梗塞の発症につながりかねませんので、中高齢者は避けたほうが無難です。

 では、具体的にはどんな運動が適しているのでしょうか。それは【軽く汗をかく】あるいは【軽く息切れがする程度】の有酸素運動を指します。【早歩きの散歩】がお勧めです。有酸素運動はエネルギー消費量を確保するのには良いとされております。散歩、水泳、自転車エルゴメーター、ジョギングなどを指します。散歩なら毎日約30-40分程度続けるのが良いでしょう。日常生活では、なるべくエレベーターは使用しないで階段を利用する、1㎞以内なら歩行する、4㎞以内なら自動車よりも自転車を利用する等です。毎日継続できる程度の無理のない運動は、脳卒中を予防すると同時に気持ちもリフレッシュできます。イライラやストレス解消には、まさにうってつけです。さらに、有酸素運動は認知機能低下を抑えるというデータもありますので、トリプル効果です。

 9.万病の引き金になる 太りすぎ

 高血圧や糖尿病、高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症など、さまざまな生活習慣病の原因となるのが肥満です。肥満の解消は脳卒中の予防にも欠かせません。BMI(体格指数)=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)が25を超えると肥満とされます。肥満には体脂肪の蓄積の仕方により【皮下脂肪型】【内臓脂肪型】があります。皮下脂肪型肥満は女性に多く、それほど大きな問題にはなることがありませんが、問題は内臓脂肪型肥満です。腹腔内の腸の周りの腸間膜などに脂肪が沈着しているタイプの肥満で、下半身よりウエスト周りが大きくなるその体形から【リンゴ型肥満】とも呼ばれます。内臓脂肪型肥満は腹囲を測定することで大まかに知ることができます。腹囲が男性で85㎝以上、女性では90㎝以上で、さらに脂質異常症、高血圧、糖尿病のうち二つ以上がある場合をメタボリックシンドロームと呼びます。メタボリックシンドロームの方は動脈硬化が強くなり、脳梗塞や心筋梗塞になる確率が高くなります。当然、肥満を予防するためには普段から食べすぎ、飲みすぎにならないように注意することと、適切な運動をすることが大切です。

 10.脳卒中起きたらすぐに病院へ

 片側の運動麻痺や痺れ、話ができなくなる、呂律が回らない、視野が欠ける、二重に物が見えるなどの症状が一時的に出現して、その後、回復することを一過性脳虚血発作(TIA)と言います。TIA後、高率に脳梗塞になることがわかっていますので、TIAは脳梗塞の前兆として非常に大切です。もちろん前記の症状が生じたり、突然の激しい頭痛、強いめまいが出現したりしたら、横になって様子を見ようとは考えず、すぐにCTやMRI検査の可能な病院へ行くなり、搬送してください。脳卒中は突然、これらの症状が起こります。病気は早期発見、早期治療が原則であり、特に脳卒中は時間との戦いです。早期に治療が開始できれば命の危険を防ぎ、後遺症を軽く済ませることができます。特に脳梗塞の場合には、以前に解説した血栓溶解療法や血栓回収術ができれば、予後が良好になる可能性があります。発症から2時間以内で病院に到着できるようにすることが大切です。図1にあるような症状が出たら、脳卒中の可能性がありますので、すぐに検査のできる大きな病院を受診してください。
 これまでのシリーズで、脳卒中を予防するための十か条を連載してきました。
 脳卒中の発症は、喫煙、多量飲酒、不規則な食生活、運動不足、睡眠不足等の生活習慣の乱れから始まります。その改善が不十分になると、高血圧、糖尿病、不整脈、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの危険因子が現れます。そして、その管理が不十分になると、脳卒中を発症してしまいます。脳卒中を発症すると命の危険はもとより、介護が必要な状態になる恐れが極めて高くなるため、発症予防が大切です。脳卒中予防の十か条(図2)を再度、おさらいしておきましょう。

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 次回は脳卒中の最大の危険因子となっているメタボリックシンドロームについて解説します。

3月号より