【復興の道標・放射線教育】ママ考案「○×テスト」 相馬・中村二中で初授業

 
放射線基礎知識テストを活用して行われた授業

 市民レベルから放射線教育を進めていく。南相馬市の主婦らでつくる団体「ベテランママの会」は、放射線に関する基礎知識のテストを作成した。風評の払拭(ふっしょく)や偏見の解消には、放射線への正しい知識と理解が大前提であり、今後、県内外の教育現場をはじめ一般に普及することが期待される。

 同会代表の番場さち子さん(56)は「子どもの時から放射線の正しい知識を学んでほしい」と作成の経緯を語る。全国の子どもたちが「放射能は人から人にうつらない」などの知識を身に付けることで、本県の子どもへのいじめ防止や偏見解消につなげたい考えだ。

 テストは南相馬市立総合病院の坪倉正治医師(35)と早野龍五東大名誉教授(65)の協力で作成。小学校高学年から一般までを対象に初級、中級、上級の3種類があり、いずれも20問程度で、所要時間は5分程度という。設問は、農産物に含まれる放射性物質の違いによる影響の差や福島と世界の空間放射線量の比較などで、「○」「×」で答える。

 12日は相馬市の中村二中で初めてテストを活用した放射線教育の授業が行われた。同会などからテスト実施の打診を受けた同校が「テストを受けることで、生徒が持っている放射線への認識と正しい知識の違いを身をもって分かることができる」と、今回授業に取り入れることを決めたという。

 同日は2年生約80人がテストを受けて答えを確認した後、環境再生プラザの職員から放射線の特徴や体への影響について講義を受けた。生徒(14)は「県産物が検査を受け、安全に市場に出回っていることなど自分の認識と違う部分がいくつかあった。学ぶべきことが多かった」と話した。

 ◆坪倉医師ら協力

 坪倉正治医師は市民が正しい知識を身に付けるために「これからは広く市民レベルでも動いていく必要がある」と指摘する。

 現在の教育現場については「放射線教育で教える方向性が統一されていない。平和利用を基本に教える学校もあるが、まずは最低限知らなくてはいけないことがある」と強調。「出荷制限が続く食品に関しても『食べてはいけない』と教えるのと『それ以外のものは安全』と教えるのでは、与える安心感が変わる。なぜ放射線について教えるか明確にする必要がある」とした。

 テストを通じて「本県の子どもがつらい思いをしないように、悪意を持つ人に明確に説明できる知識を身に付けてほしい」と話した。