【復興の道標・放射線教育】学び続ける風土つくる 意欲に応える方策を
浜通りの高校生たちが1986年のチェルノブイリ原発事故で被災したベラルーシを訪れ、原発事故からの復興や放射線教育などについて学んだ友好訪問団。同行した社会学者の開沼博(33)=いわき市出身、立命館大准教授=は放射線教育の在り方について「本県だけでなく、県外の人でも学びたいという思いを持つ人が学べる状況にあるべきだ」と提言する。
東京電力福島第1原発事故後、本県などで行われている放射線教育。教育現場では、教員たちが子どもたちに正しい知識を伝え、家庭でも普及させることに力を注ぐが、思うように進んでいない。開沼はこうした現状について「放射線の性質、県内各地の放射線量など基礎知識を持っていても、それが現在の福島で生活することに具体的に結び付いているとは限らない」と指摘する。
チェルノブイリ原発事故で大きな被害を受けたベラルーシを高校生たちと訪れ、放射線教育の現場を視察した。原発事故から30年が過ぎたベラルーシでは、事故が既に「歴史の一部」になっていることを感じた。放射線教育は防災教育や交通安全教育など「生活の安全の基礎」という科目の中で学ぶ。チェルノブイリ原発事故を知らない世代も増えてきているが、放射線を科学的に捉えて学び続ける風土があった。
チェルノブイリ原発から数十キロの距離にある南部ゴメリ州のストレリチェボ中等学校では、放射線について学ぶサークル「エーデルワイス」の子どもたちが実演を交えながら発表する様子を見た。「エーデルワイスの発表は外の人に伝え、議論をし続けてきた蓄積を感じるものだった。そういった風土を福島でもつくることができるというヒントを感じた」
開沼は自然科学的な放射線知識を教えるだけではなく、社会科学的な知識や倫理観も含めて学び合うことの必要性を説く。「民間ベースで福島が抱える放射線の問題について検定試験を行うなど、学ぶ意欲がある人の理解度を高めるための方策を試す時ではないか」(文中敬称略)
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