【復興の道標・番外編】理不尽に心痛める福島県民 教育・行政対応求める

 
本紙で連載した「復興の道標 不条理との闘い」

 現状を踏まえずに「福島は危険」といった偏見や無理解が根強い実態を考えた連載「復興の道標 不条理との闘い」。東日本大震災と原発事故から丸6年が過ぎた今も国内外に残るゆがんだ視線を巡り、読者からはさまざまな声が寄せられた。子どもへの教育や、行政により強い対応を求める意見もあった。

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 「毎回、何とかならないものかと、心を痛めながら読んだ。悔し涙があふれます」。いわき市の60代女性は、感想を寄せた。連載の4回目で福島医大の前田正治教授が「『放射線は危ない』というイメージだけが一部で根強く残った。無関心とイメージの固定化が県民へ偏見をもたらしている」と指摘したことについて、女性は放射線について正しい知識を学ぶ教育の重要性を訴える。

 「放射線が自然界に存在していることなど、放射線について小さい頃から教えることが得策。そうすれば、やがてそれを学んだ子どもたちが大人の心をも動かすに違いない。国はこうした教育にこそお金をかけてほしい」と意見した。

 一方、福島市の50代の会社員男性は、風評払拭(ふっしょく)に向けた行政の対応に注文を付ける。「風評とは、根拠のないうわさを信じている、または信じ込まされた人がいるから発している。こうした問題への対策を抜きに、例えば除染や放射性物質検査といった対策にこだわっていたことが、ここまで福島の風評が拡大してしまった原因だと思う」

 内堀雅雄知事が福島民友新聞社のインタビューで、外部に向け「攻めの情報発信」に取り組むと語ったことに「県だけじゃなく、政府ももっと早くこれをすべきだったと思っている」と指摘する。

 会社員男性は、報道の在り方にも注文する。世界には現在の福島市や郡山市よりも環境中の放射線量の高い地域は多くあることを指摘した上で「原発事故当初はレントゲンや飛行機に乗った際の被ばく量と比較して、福島に住んでも危険はないことが報道される時期もあったが、いつの間にかそういう報道はなくなった」と問題提起した。

 連載への不満もあった。2回目では高校生による東京電力福島第1原発の視察を描いたが、18歳未満を視察させることの是非をもっと検証すべきだとの意見が寄せられた。

 連載を読んで、自らが経験した「不条理」を振り返る人もいた。いわき市の男性の妻は同市の病院に検査入院中に大地震が発生。診療ができなくなり、受け入れを承諾してくれた水戸市の病院に向かったところ「福島の人間は受け付けできません」と告げられた。責任ある人に対応を求めると入院を許可された。男性は医師や看護師には感謝しているが「病院の受け付け担当者の対応は今でも思い出すと涙が流れそうです」とつづった。

 また東京在住の男性は、本県産農産物に対する偏見を身近に感じることを明かし「東京で行われる『福島物産展』などは盛況だが、そのような場所に足を運ばない人たちにいかに農産物の安全性を理解してもらえるかが、風評克服の鍵だ」と指摘した。