【復興の道標・識者の意見】立命館大准教授・開沼博氏 寝た子を起こすべき

 
開沼博氏

 「福島は危険」といった偏見など、本県に向けられる外部からのゆがんだ視線について考えた「復興の道標 不条理との闘い」。連載を踏まえた識者の意見を紹介する。

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 NPO法人ハッピーロードネット(広野町)などが取り組んだ国道6号の清掃活動に対し、事実に基づかない中傷が殺到したケースなど、デマや偏見がもたらした県民の不条理な経験は数多くある。しかし、これまでこうした事例を集め、社会問題として解決に向け議論しようという動きが進まなかった。背景にあるのは「寝た子は起こすな」という考え方だ。

 「一部の特殊な人がやっていることにすぎない」「中傷に反応すると、かえって事を大きくしてしまう」などが「寝た子は起こすな」の理由だが、(東日本大震災から)丸6年が経過した今、デマや偏見が野放しになってしまった現状を反省し、どんどん寝た子を起こしていくべきだ。差別発言などを「多様性を認め合おう」との理由で許容してしまっていた部分がなかったか、考える必要がある。

 行政は、担当部署をつくって組織的に対応する体制を構築したり、デマや偏見を扱う第三者機関を置くなどの対策を講じるべきだ。まずは、経済的損失の問題やデマ・偏見の問題を含む「風評被害」という言葉を、しっかり分解して理解することから始めてほしい。

 問題解決に向けて報道機関の役割は重要だ。昨年から避難者に対するいじめが大きく報道されるようになったのをきっかけに、デマや偏見の問題という切り口で福島を扱おうと考える県外メディアは増えたように感じる。避難者へのいじめも、県民がさらされる偏見も本県への正しい認識が浸透しなければ解決しない。