【復興の道標・放射線教育】「放射能うつる」の誤解 学校外の連携模索
放射線をあびた人からは、周りの人に放射能がうつる―。○か×か。
2年前、県教委が小中学校で指定した放射線教育の実践協力校の一つで行ったアンケート。子どもの4分の1がこれに答えられなかった。原発事故後、県内全ての小中学校で始まった放射線教育を、実効性があるものにするにはどうすべきか。教育現場では試行錯誤が続く。
県内の全小中学校では、年2~3時間を目安に放射線の基礎知識や食品検査、放射線を巡る偏見の問題などを学んでいる。中でも協力校はより時間を割いて重点的に取り組んでいるが、その協力校でさえ、「放射能はうつる」の問いに明確な答えを示せない子どもが25%もいた。
「年に数時間の授業よりも、少しずつでも繰り返し、横断的に学んでこそ定着する」
本年度の協力校で、三春町に仮設校舎を置く富岡二中の校長・村上順一(56)は強調する。除染作業や食品の放射性物質検査など、身の回りにこれだけ教育の素材があれば、あらゆる教科や学校生活で放射線を学ぶ機会は多いはずだ。
富岡二中では理科や社会、国語、保健体育、総合などを活用して、放射線について学ぶ年間計画を立てた。今春、避難指示が解除された富岡町の職員を講師に迎え、古里の現状や展望を聞く機会を設けたほか、秋には放射線に関する研究機関などへの職場訪問も行う予定だ。
原発事故から6年。県教委は「学力や体力向上、震災に伴う心のケア、社会課題への対応など多様な課題を抱える学校現場だけでは、放射線教育に十分な時間を割き、放射線への理解を深く浸透させるのは難しい」と危機感を募らす。
それならば学校の中だけでなく、地域や研究機関を巻き込んだ形で放射線教育に取り組もうとする富岡二中のような動きが出てきた。
これまで学校や地域団体、研究機関などが独自に積み重ねてきた知見を連動させ、「福島モデル」の放射線教育を確立させようという試みだ。今春には県教委や環境省の除染情報プラザ、日赤、福島大、東北大などが産学官の運営協議会を設立、11月にはフォーラムを開いて発信すべく構想を練っている。
(文中敬称略)
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