【海洋流出】 本県沖は低下傾向 魚介類基準値超は0.6%

 
【海洋流出】 本県沖は低下傾向 魚介類基準値超は0.6%

 東京電力福島第1原発の廃炉作業は、汚染水問題が課題となる。汚染水の海洋への流出に懸念が強まり、本県沖の試験操業は操業再開を一時見送るなど、本県漁業の復興に水を差した形となった。

 原発事故による放射性物質の海洋流出を調べる東京海洋大の神田穣太教授は「汚染水が継続的に海に流れ出ているのは間違いない」と指摘する。一方で、本県沖の魚介類が影響を受けるのは、主に事故直後に放出された放射性物質が要因で、その後に海に流れ出た放射性物質の影響は「ほとんどない」との認識を示す。

 神田教授らの試算によると、原発事故発生から2011(平成23)年5月までの2カ月間に海に放出された放射性物質は約3500兆〜5000兆ベクレル。その後11年6月〜今年9月の2年4カ月で流出した累計量は、事故直後の0.6%に満たない。福島第1原発の港湾周辺を除き、本県沖の海水の放射性物質濃度は全体的に低下傾向にあるという。

 本県沖の試験操業は、同原発周辺20キロを除く沿岸部と、40キロ以上離れた沖合の水深150メートルより深い海域で行われている。神田教授は試験操業について「海域の放射性物質検査を参考にしており、安全チェックも行っている。とても合理的だ」と評価する。

 県水産試験場は本県沖の魚介類を毎週約150検体調べている。調査結果によると、食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える検体の割合は下がり続けている。今年9月の検査で基準値を超えたのは検査数全体の0.6%で、漁獲された海域は福島第1原発周辺海域に集中した。また、原発事故後に生まれた魚などは事故以前から生息するものと比べ、放射性物質濃度が低い傾向にある。