福島大経済経営学類特任准教授・則藤孝志氏に聞く 流通へのアプローチを

 

 福島大経済経営学類の則藤孝志特任准教授(32)に、風評払拭(ふっしょく)に向け求められる視点について聞いた。

 ―風評被害の現状は。
 「県産青果物はいまだ、原発事故前の売り先が戻らなかったり、不当に安い価格で取引されるなど影響が続いている。これまで風評対策は放射性物質検査の結果を基に安全性を示したり、おいしさを訴えるなど消費者向けの取り組みが中心だった。しかし、今後は流通へのアプローチも必要だ」

 ―なぜか。
 「原発事故をきっかけに別の産地に取引先を移した業者が、取引先を本県に戻してくれないことが問題なのだが、業者にとっては新たな取引先との間に信頼関係が生まれて簡単に取引をやめることができない事情がある。これは消費者が放射線を不安に思うかどうかという話とは別次元の問題だ。流通は人と人とのつながりであり、本県産に戻してもらうにはそれに見合う魅力が必要となる」

 ―どうすればよいか。
 「流通の現場では、品質の高さに加え、売り場や買い手の要望に柔軟に対応できる能力が評価される。農協の組織力を生かし、産地としての品質や対応力を高める取り組みが必要だ」

 のりとう・たかし 和歌山県有田市出身。京都大大学院農学研究科を経て2013(平成25)年から現職。専門はフードシステム論。