損害賠償「2年一括」のはずが... 商工業者、事故の因果立証厳しく

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 「原発事故の風評被害は終わっていない。東電は実情にもっと目を向けるべきだ」。いわき市で飲食店を経営する男性(65)は先日、営業損害賠償について逸失利益の1年分相当で東電と合意した。風評被害で売り上げが減ったとして請求したが「2年分の賠償」は得られなかった。

 創業26年。震災前は盆や正月になると帰省した親戚、友人が食べに来てくれた。だが震災後は売り上げが減少、男性は「客足は目に見えて減った。県外に引っ越してしまった常連さんもいる」と肩を落とす。

 店の運転資金は不足し、工面先を探したが見つからず東電に賠償請求した。結果、回答は「1年分」だった。男性は納得できなかったが、すぐにでもまとまった資金が必要だったため、合意する考えを東電に伝えた。

 「1年分の賠償」は男性だけに限ったケースではない。県商工会連合会の担当者は「因果関係を立証できず、1年分の賠償となった事例はよく聞く」と指摘する。避難指示区域外の業者に当てはまる場合が多いとみられる。「2年一括」に移行後、原発事故との因果関係を立証することが厳格化され、移行前には求められなかった書類を提出するよう指示されることもあるという。担当者は「事故から5年たった今になって書類の提出を求められても、対応できない業者は多いはず」としている。

 専門家派遣で「事業再開」支援

 2年一括分の賠償が支払われた後の、商工業者の自立支援に向けた取り組みが進んでいる。東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た県内12市町村の事業者や農家の自立を支援するため、昨年8月に発足した国や県、民間企業による「福島相双復興官民合同チーム」は、1年間で約4100事業者を個別訪問。企業経営の専門家を派遣して事業再開や販路拡大に向けた支援に取り組んでいる。

 12市町村外の事業者に対しては、県や金融機関、商工団体など約140団体が昨年10月に連絡協議会を設立し、震災と原発事故で売り上げなどに影響を受けた事業者への支援策を検討している。

 新方針案にJAは疑問

 東京電力から、農林業の損害賠償の新たな方針案を示されたJAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策県協議会は、「2年一括」が支払われた後の賠償の仕組みが明示されていないことを懸念。

 JA福島中央会の担当者は「農作物の風評は根強く、新たな土地を探しての営農再開も簡単ではない。今まで通りの賠償対応で何も問題はないのに、なぜ変えなければならないのか」と疑問を呈す。