学校給食に福島県産食材...再び 検査を徹底し保護者の不安払拭

 
地元の食材を使用した給食をおいしそうに食べる児童=新地小

 県内公立学校の給食に県産食材を取り入れる動きが活発化している。東京電力福島第1原発事故後、放射性物質への不安から県産食材の使用割合は急落したものの次第に回復、2016(平成28)年度は震災前の水準に迫った。県は安全確保と保護者の理解が進んだとみており、今後も地元産の使用を推進、地産地消と食育に役立てたい考えだ。

 コメや野菜、一部魚介を使用

 【新地町】新地町産コシヒカリのご飯やホウレンソウのサラダ、相馬市産キュウリを挟んだツナサンド。新地町にある新地小の給食には、地場産品を使用したメニューがずらりと並び、給食の時間になると児童がおいしそうに食べる光景が広がる。
 町教委は、町内の小学校の給食で県産食材の使用を積極的に進めており、その割合は約4割に達する。ほぼ原発事故前と同じ水準だ。新地小には栄養教諭の小泉弘子さん(57)が配属され、町による放射性物質検査に加え、毎日、測定器で独自に放射線量を検査。同校は一部魚介類も使っており、多い週では県産食材の割合が6割に上るという。
 町は2015(平成27)年度から県産食材の使用を本格的に開始。文部科学省の食育事業指定を受け、地元の食材を使った料理教室を開催するなど、保護者の理解を深めながら開始に向けて少しずつ準備した。現在も料理コンテストを開いたり、広報誌や学校放送で地元食材の大切さを訴えている。
 小泉教諭は「地元の新鮮な食材のおいしさを知った大人になってほしい」と意義を語る。同校4年の高野育恵さん(9)は給食を頬張り「野菜がみずみずしくて、いくらでも食べられる」と笑顔を見せた。

 地元直売所が協力

 【鮫川村】鮫川村と古殿町の小、中学校で提供される給食を作っている鮫川村学校給食センターは、地元の食材を生かした献立作りを進めている。東北農政局が昨年行った地産地消給食等メニューコンテストの学校給食・社員食堂部門で局長賞を受賞するなど、取り組みは高く評価されている。原発事故後も、継続して地産地消を進めてきた結果と、関係者は胸を張る。
 「地産地消の推進は一朝一夕にできることではない」。センターの舟木正博所長(47)は強調する。
 取り組みを支えるのは2005(平成17)年に開館した鮫川村農産物直売所「手まめ館」と古殿町にある直売所「おふくろの駅」。給食の献立は、二つの直売所から提供される出荷見込みを基に考えられている。
 原発事故後、一部の食材が出荷停止により手に入らなくなり、影響を心配して一部の食材の使用を控えることもあったが、村が11年秋に放射性物質の測定器を導入。給食に出される食材の安全性確保の体制をいち早く整えたことで、給食に地元の食材が戻ってきた。舟木所長は「村、生産者、保護者の理解があるからこそ、地産地消を進められている」と語る。

 情報提供で安全性を周知

 【いわき市】いわき市は2014(平成26)年12月に、給食での地元産米の使用を再開した。当初は一部保護者から不安の声が上がったが、放射性物質検査の結果を毎日ホームページ上で公表するなど安全性を周知した。その後、野菜なども地元産を取り入れ、現在の割合は給食全体の約3割と原発事故前と変わらない。
 市教委によると、地元産の食材を食べることに不安を感じている保護者への対応として、弁当持参も可能としており、実際に弁当を持ってきている児童、生徒はほとんどいないという。
 コメは県による全量全袋検査に加え、市として精米時に抽出検査をしている。現在、同市の児童、生徒約2万6000人が年間に給食で消費するコメの量は約320トンに達する。
 野菜などの食材は、市内九つの給食センターに納品された翌日分の食材をNPO法人いわき環境システムが受け取り、給食センターごとに1日計約70検体の検査を実施。結果は毎日、市に報告している。市教委は保護者の安心につながればと、年3回の検査の見学会に加え、給食フェアを開催したり、地元シェフとの交流などを行っている。