【ふくしまの酒/金の系譜・中】県産酒...海外販路に商機

 
(写真上)「海外展開は挑戦し続けることが大事」と話す小針さん。手にする天狗ボトルは外国人の目を引くという=本宮市・大天狗酒造 、(写真下)大天狗酒造の純米酒。左が国内用、右が輸出用のラベル

 日本酒の国内消費量は年々減る中、海外の日本酒市場の伸びが著しい。世界で日本酒ブームが起きているためで、県内の酒蔵も輸出に注力し成功をつかんでいる。

 「海外輸出に挑戦してよかった」と語るのは創業約150年を数える本宮市唯一の酒蔵「大天狗酒造」の杜氏の小針沙織さん。2021年から米国への輸出を始め、成約額は当初目標の2倍超となった。「海外展開で販売量が増加しており、今後の経営を考える上でも重要だと痛感した」と語る。

 海外での日本酒需要の高まりで、全国的に輸出が拡大している。貿易統計によると、昨年の日本酒輸出額は約475億円と13年連続で前年を上回って伸びている。輸出額は1位中国、2位米国、3位香港で、東南アジアや欧州でも拡大しており、特に高価格帯の日本酒が好まれているとした。

 県によると、2021年度の県産の日本酒とリキュール類の輸出額は前年度比77%増の約7億7300万円で過去最高だった。うち日本酒は約3億8700万円と半分を占める。増加の主な要因は「米国で県産日本酒の知名度が向上し、飲食店や小売店での取り扱いが拡大している」という。

 輸出向けラベルと物語性

 「輸出販路の構築が壁だった」と小針さん。販路開拓先として海外に目が向き、海外の商談会に参加するなどしていたが、次につながる一手が打てずにいた。そこでジェトロ福島に相談し、2020年から支援を受けて、米国の輸入業者との商談を成約させた。

 その際、海外向けに印象の良いラベルやロゴを制作したほか、女性杜氏が造っているストーリー性をつけ、酒の味や合う料理なども説明に加えたという。「米国の輸入業者からは味わいとコンセプトが人気と聞いている。今後も輸出拡大を目指す」と語った。

 全体の輸出量に占める県産酒の割合は少ない。ジェトロ福島の担当者は、海外では日本食レストラン以外で日本酒が扱われるようになっている点を踏まえ「高品質の福島の日本酒は伸びしろがある。海外向けのブランディングが鍵を握る」としている。