「がん治療と歯科」 並行治療の適否を検討

 

 がん治療の進歩により、がん治療中の患者さんが歯科を訪れることも珍しくありません。しかし、一方で「がん治療中なので歯医者は控えていました」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。どちらが正しいのでしょう。もちろん、がんの診断を受けた患者さんの最大の関心事は、ご自身のがんに関することです。歯科治療を受けるかどうかは、口腔(こうくう)内環境ががん治療を受けるにあたって適した状態なのかどうかということです。

 現在のがん治療は、手術療法、化学療法、放射線療法に大別されます。例えば手術療法で全身麻酔の時に口の中にボロボロの歯がたくさんあったらどうでしょう。麻酔をかける時に歯が折れると挿管が困難になるかもしれません。手術直前にむし歯で顔が腫れ上がれば、手術が延期になるかもしれません。また、化学療法や放射線療法では、免疫機能が著しく弱まることがあります。そこにむし歯が暴れ始めると、ややこしいことになります。がんと診断されたからといって歯科治療が受けられないということは基本的にありません。しかし病気の種類によっては、できることは異なります。まずはがんの主治医と歯科診療について相談し、場合によっては歯科医院に診療情報の提供をしていただきましょう。その上で口腔内の環境をがん治療に向けて整備していくことが大切です。

 (県歯科医師会)