オシッコが出ない。苦しい!

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。大森中央泌尿器科・内科・外科クリニック(福島市)の横田崇先生の泌尿器科に関するお話です。
オシッコが出ない。苦しい!
医療法人
大森中央泌尿器科・内科・
外科クリニック
横田崇先生
福島医科大学医学部卒、米国スタンフォード大留学、福島医大泌尿器科講座助教授などを経て2005年、福島市に医療法人大森中央泌尿器科・内科・外科クリニックを開院、福島市医師会理事。
 
 

     

 新緑がまぶしい季節ですが、私の思い出は故郷が恋しくなり、帰りたい衝動に駆られた青春時代の5月です。

 皆さんは「排尿」について考えたことがありますか?そしてオシッコは出て当たり前と思っていませんか?それほど気にも留めないで1日に6回から7回する排尿ですが、年齢を重ねると男性でも女性でもオシッコのキレが悪い、尿が残っている感じがするなど、排尿のたびにストレスを感じることが多くなります。排尿にトラブルを抱えていると外出することが嫌になり、友達との旅行にも行きたくないなど引きこもりや抑うつ状態になりやすく、ひいては認知症を引き起こす要因と言われています。今回はうまく排尿ができない排尿困難についてお話します。

1、正常な排尿とは何か

 オシッコの状態が異常なのか、それとも年齢相応なのか、自分ではなかなか判断が難しいものです。では正常な排尿とはどのような状態を言うのでしょうか?

(1)膀胱に尿がたまると尿意を感じ、漏らすことなくトイレまで我慢できる

(2)十分な量の尿を膀胱にためられる

(3)排尿しようとすれば努力することなくいつでも排尿できる

(4)膀胱にたまった尿を残すことなく全て排尿できる

 これら4つの事が全てできて初めて正常な排尿と言えます。(1)(2)は膀胱にオシッコをためておく蓄尿期、(3)(4)は膀胱から尿を体外に出す排出期と呼ばれます。オシッコがしたいという感覚になるのは、膀胱に尿がたまるにつれて膀胱の筋肉が引き伸ばされ、その刺激が神経を伝わって脳に達し、膀胱に尿がたまったと大脳が認識することです(図1)。この尿意という感覚がない人は正常な排尿とは言えないのです。例えば膀胱から大脳までの間に何らかの神経の病気(事故による脊髄の切断や脳梗塞そして糖尿病による神経障害など)が起こると尿意を感じないため、正常な排尿はできなくなります。尿意を感じた大脳は尿を我慢するのか排出するのかを判断します。『我慢して』と判断すると膀胱が緩み、かつ膀胱の出口部にある括約筋が尿道を締めつけて尿を漏れないようにします。『排尿して』と判断したら締めつけていた尿道括約筋が最初に緩み、次いで膀胱の収縮が起こり尿を残すことなく排出させます(図2)。

 さらに膀胱にたまった尿の多少にかかわらず排尿できることも正常な排尿なら、できなくてはなりません。すなわち私たちの排尿はいつも同じ量の尿がたまらないと排出できないわけではなく、状況によっては少しの尿量でも排出できるので、毎回排出するオシッコの量が違うのです。

 また年齢を重ねるにつれて尿意を感じてからトイレに行くまでの間に尿が少し漏れてしまうと訴える人がいます。排尿は尿道括約筋が最初に緩むことから始まるので、膀胱にたまっていた尿が尿道に少し流れ込みます。その時「あッ漏れた」と思って括約筋を締めて我慢しようとします。若い人は筋肉が強く神経反射が早いので、瞬時に括約筋を締め尿が漏れるのを防止できますが、高齢になると筋肉が弱くなっているうえに神経も鈍くなっているので「チョイ漏れ」が起こってしまいます。これを防ぐには括約筋を鍛えるしかありません。この方法は骨盤底筋体操というもので、本年2月号に載せてありますので参照してください。

 どうです、簡単に行っているように見える排尿ですが、その行為は大脳で感じることから始まるので、「膀胱は心の鏡」と言われるように心の問題も関与する複雑かつ繊細な行為であることが理解できましたでしょうか?

2、尿が出ない

 排尿は膀胱と尿道括約筋の収縮と緩みという相反する動作で行われています。その連動がうまくいかないと排尿も円滑に行われません。若いころは何でもなかった排尿ですが、50歳を過ぎるころからオシッコが終わるまで時間がかかる、排尿後ズボンや下着にオシッコが引っかかるなどの症状が気に(12ページへ続く) なりだします。それと同時に男性では尿道を取り巻く前立腺という臓器が年齢とともに大きくなり、尿道を圧迫し尿が出づらくなってきます。これらの症状は女性でもみられることがわかり、男性特有の臓器である前立腺ばかりに問題があるのではなく、膀胱にも問題があることがわかってきました(図3)。その原因は様々です。

 膀胱の機能を悪くする原因の一つに動脈硬化があります。動脈硬化になると血管の壁が狭くなり、膀胱への血流が減少して膀胱筋肉の収縮や緩みを悪くするなど排尿と密接な関連があります。生活習慣病は動脈硬化を進行させる主要な病気ですので予防に努めましょう。

 その他、精神安定剤や睡眠薬、風邪薬など飲んでいる薬(図4)の副作用、飲酒後やオシッコを長時間我慢してしまった後など、それに加えて男性では前立腺肥大症なども考えられます。薬を飲み始めてオシッコが出にくくなったら主治医に相談しましょう。薬が原因の場合は薬の効果がなくなるまで2~3週間はかかりますので、しばらくはオシッコが出ない状態が続いてしまいます。

 一度膀胱が伸びきってしまうと膀胱の収縮力が元の状態に戻るまでに時間がかかりますので、それまでの間、膀胱内にカテーテルという管を一定期間入れてオシッコを出させることもあります。膀胱にたまったオシッコがなかなか出せないのは、痛みを伴うこともあり大変つらいものです。オシッコが出なくて冷や汗が出て痛みに耐えている患者さんの顔が、管を通して尿が出始めた後のホッとした顔に変わるのを見ると、排尿困難やオシッコが全く出ない状態は生活の質を非常に低下させる病気だとつくづく思います。前立腺による排尿困難には有効な治療薬がありますので、排尿が気になりだしたら的確な診断を受けて処方してもらいましょう。

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 次回は最終回「泌尿器科の病気:ゆりかごから介護まで」です。

月号より