脳卒中について。その5

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。今回から公立藤田総合病院(国見町)副院長の佐藤昌宏先生が担当します。
脳卒中について。その5
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

      

 脳卒中の診断では症状の診察が大切ですが、さらに重要なのは画像診断を中心とした検査です。今回は代表的画像検査の頭部CTとMRIについてお話します。

Ⅰ頭部CT
 頭部CT検査とは、脳の断層写真を作る検査です。1㎜-1㎝間隔で脳の輪切りの画像を作ることができます。頭をドーム状の検査機器に入れて、短い検査時間(10秒足らず)で検査を行うことができます(図1)。患者さんの頭の周りを1周するようにX線が照射されます。そして、頭を通過したX線をコンピューターで計算して重ね合わせると、頭の中を輪切りにしたように見えます。X線を照射しますので被ばくはしますが、通常、健康に影響を及ぼすことはありません。
 脳卒中を疑う患者さんには緊急で頭部CT検査を行います。CTでは、骨は白く、水は黒く、脳はその中間のいろいろな濃さの灰色に見えます。この検査が最も力を発揮する病気は、脳出血やくも膜下出血など出血を伴う場合です。新しい出血はCTで白く見え(高吸収域と言います)、素人の方にも一目瞭然で、病気の起きた直後からわかります(図2)。一方、脳梗塞は起こってから早い段階(超急性期)では変化は見えませんが、脳組織が壊死に陥ってしまった後(慢性期)には黒く見えてきます(低吸収域と言います)。
 CTでわかるようになるまでに少なくとも数時間かかります。最初何もなくても、時間を置いてもう一度検査するとはっきり出てきます。
 ただ、脳梗塞が起こってから早い段階でも、専門医が見ると脳の壊死や浮腫などの変化が見える場合もあります(専門的には早期虚血性変化と言います)。脳内に出血が認められた場合には、CT用造影剤を静脈内注射して、脳の血管を3次元で立体的に観察(3D-CTアンジオグラフィー)して、脳内に出血の原因となる脳動脈瘤や脳血管奇形などがないかを調べます。脳血管の状態を観察するときに役に立ちます。造影剤はヨード製剤という種類の造影剤を使用しますが、腎機能障害がないか血液検査をしてから行います。まれにアレルギー反応を起こすことがありますが、最近は製剤が良くなり、頻度はかなり低くなりました。

 脳出血も脳梗塞も、発症して数時間後から周りが次第に水ぶくれの状態(これを脳浮腫と言います)になって、CTでは黒く見えます。つまり、脳出血では、白く見える出血の周りを黒く見える脳浮腫が取り囲むようになり、脳梗塞の場合は、どちらも黒く見えるので、病巣全体が大きくなって見えます。こうした変化に応じて、その状態に合わせた治療をしますので、CT検査はしばしば繰り返し行われます。

 また、徐々に脳の外側に血がにじみ出て脳を圧迫する慢性硬膜下血腫、脳の中あるいは脳を包んでいる膜にできものができる脳腫瘍、脳の中に膿の塊ができる脳膿瘍といった病気もCTでわかります。
 MRIの登場でCTは少し古い検査になったと思われがちですが、現在でも脳卒中が疑われたときに真っ先に行われるのがCT検査で、装置の性能もどんどん進歩し、昔の機械とは比べものにならないほど脳の中がきれいに、しかも短い検査時間で見えるようになりました。ですから、半身の麻痺が起こり、1時間後に病院でCT検査をして白い塊が見つかれば、直ちに脳出血と診断できますし、出血がなければ脳梗塞の可能性が高いという診断になり、頭部MRI検査を行います。

頭部MRI
 MRI検査とは、強い磁力をかけて原子の信号の変化を捉えることにより脳の画像を作る検査です。CT検査と同じように断層の画像を観察できますが、CT検査よりも解像度が高く、細かい病変まで観察することができます。磁力がより強い機種であればあるほど、より細かく画像を見ることができます。脳梗塞の場合、CTで脳の壊死が明らかになるまで、長い時間かかることが多いですが、MRI検査の場合には拡散強調画像という解析方法を用いることで、脳梗塞が起こって1時間以内でも梗塞巣を検出することができます(図3)。また、頭部CT検査では、骨に囲まれた場所(小脳、脳幹など)や小さい病変は観察しにくいですが、MRI検査ではこのような病変でもはっきりと見ることができます。

 さらに、同じ検査機器を用いて、造影剤を使わずに脳の血管のみを観察することができます。このMRを使った血管の検査をMRA検査と言います。血管の狭い部分、詰まっている部分、動脈の瘤などを観察することができます。MRI検査とMRA検査は同時に行うことが可能です。

 MR検査は、CT検査のようにX線の被ばくはありませんが、ペースメーカー、古いタイプの脳内クリップや人工関節、その他、入れ墨など体の中に金属があると検査ができません。このような体内金属がある患者さんは、必ず主治医の先生にご確認ください。また、検査時間が長く、筒状の狭いドームに身体ごと入らないといけませんので、狭い所が苦手な方は苦痛を感じることもあります。検査中は、工事現場のような大きな音がします。

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 次回は脳卒中診断のためのその他の検査についてです。

11月号より