処理水処分、新たな局面へ 福島第1原発、初の公聴会で議論

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国内外のトリチウムの現状

 廃炉作業が進む東京電力福島第1原発から出た汚染水で浄化後に残る放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方法を検討している国の小委員会は30、31日、富岡町、郡山市などで国民の意見を聞く初の公聴会を開く。

 原子力規制委員会は海洋放出が最も現実的な処理方法とみる一方、漁業関係者らは風評被害などを念頭に海洋放出を懸念する。公聴会開催で処分を巡る議論は新たな局面を迎えようとしている。

◆◇◇時間がなく焦り

 「外部の知恵をいただくプロセスとしたい」。

 経済産業省の松永明福島復興推進グループ長は公聴会の開催意義を強調する。国の作業部会は2016(平成28)年6月、海洋放出や地下埋設など、処理水の五つの処分方法をまとめた。

 海洋放出が最も短期間に低コストで処分できると試算されたが、風評を懸念する漁業者らの反発は強く、政府は結論を先送りし、事業者の東電も静観している。

 こうした中、公聴会が開かれる背景には、処分方法を決めなければならない現実的な問題がある。

 第1原発では事故で溶け落ちた核燃料が水で冷却されているが、冷却時に水は高濃度の放射性物質で汚染され、多核種除去設備(ALPS)でもトリチウム濃度を下げることはできない。東電は20年までにタンクでの保管容量を137万トン分確保しており、今年3月末現在、処理水などの貯蔵量は約105万トン。現状の1日当たり150~220トンの汚染水発生量を考えると、残り4~6年で容量に達する見通しだ。

 工事する時間も必要で、政府内には「いつまでも議論をしていく段階ではない」との焦りもにじむ。

◇◆◇放出促す規制委

 「希釈して海洋放出するのが現実的で唯一の選択肢だ」。

 原子力規制委員会の更田豊志委員長は、科学的な安全性などを理由に海洋放出の決断を国や東電に促す。

 トリチウムは弱い放射線を出すが、規制委は健康への影響を含め海洋放出に問題はないとの立場だ。

 処理水は通常の原発運転でも発生し、1リットル当たり6万ベクレルを超えない範囲で海に放出されている。第1原発で貯蔵されている処理水のトリチウム濃度は1リットル当たり約100万ベクレルで、計約1千兆ベクレル。

 フランスの再処理施設では年間、その1千兆ベクレルの約10倍となる1京ベクレル以上が海に排出されている。処理水にはトリチウム以外の放射性物質も残るため、仮に海洋放出となれば、大気中の放射線量も考慮し、濃度を6万ベクレルの5分の1程度まで薄めて放出するとみられる。より安全性を確保するため、ALPSで再浄化する可能性もある。

◇◇◆漁業関係者くぎ

 だが、漁業関係者はこうした海洋放出ありきの動きにくぎを刺す。  「陸上保管すべきだ。漁業に対する打撃は憂慮すべきものだ」。

 県漁連の野崎哲会長は公聴会で海洋放出に反対する見通し。公聴会ではNPO法人など44個人・団体が意見を述べる。海洋放出に議論が集中することも予想され、小委員会がどう整理するかが焦点となる。

◆除去難しいトリチウム 

 トリチウムは水素の放射性同位体で三重水素とも呼ばれ、水に含まれていると除去するのは難しい。自然界にも存在する。放射線のエネルギーは弱く、人体に入った場合の影響は放射性セシウム137の約700分の1とされる。

 半減期は12.3年。体内に入ったトリチウムは新陳代謝により、水の場合は10日程度、有機物の場合は40日程度で半分が体外に排出される。東京電力福島第1原発のタンク内のトリチウム量は約1千兆ベクレル。

 国の小委員会によると、日本全国の原発による海洋へのトリチウム排出量(年間約380兆ベクレル、事故前5年平均)は、降水中に含まれるトリチウム量(年間約223兆ベクレル)の約1.7倍にあたる。

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