【首長に聞く】南相馬市長・門馬和夫氏 ロボや宇宙分野、楽しみな芽

 
門馬和夫南相馬市長

 南相馬市は、東京電力福島第1原発事故で小高区に出た避難指示が解除されてから、7月で8年を迎える。市は小高区の帰還困難区域にある1世帯について、避難指示解除に向けて特定帰還居住区域を設定する方針だ。帰還人口の鈍化など復興は途上にある一方、産業振興への動きや移住者の増加など明るい話題も出てきた。門馬和夫市長は「復興は道半ばだが、状況は一歩一歩改善している」と話す。

 ―復興状況をどう見るか。
 「地震や津波被害からの復旧はほぼ完了した。産業団地の開発や企業誘致が進み、市立総合病院の医療環境も改善してきた。市内への移住者は本年度だけで440人に上った。鹿島区の常磐道南相馬鹿島サービスエリア周辺の開発や、旧小高商高跡地の利用など将来に向けた取り組みを検討できる新しいステージに入った。産業面では4月に小高区に就農支援学校『みらい農業学校』の開校が控えている。ロボットや宇宙分野の研究など楽しみな芽が出てきた」

 ―小高区の現状と課題は。
 「震災前に1万2800人いた小高区の人口は3800人台で、震災前の3割にとどまっている。昨年と比べて帰還人口に大きな変化はなく、足踏み状態だ。小高復興産業団地の造成や、旧金房小跡地の産業団地への転用などを進めることで雇用確保に努め、人口を増やしていきたい。移住定住に向けた取り組みも継続していく」

 ―市立総合病院付属小高診療所について、入院などが可能となる「有床化」に向けてどのように取り組むか。
 「地域の高齢化が進み、小高診療所への入院機能導入の必要性は高まるが、直ちに有床化するのは難しい状況だ。介護施設との連携や訪問診療の充実を図り、住民の不安を少しでも軽減していきたい」