私たちの最後の家 岩崎さん夫妻、災害公営住宅で再出発

 
私たちの最後の家 岩崎さん夫妻、災害公営住宅で再出発

入居したばかりの新居の片付けにいそしむ岩崎さん夫妻。夫妻にとって「ついのすみか」となる

 町東部が津波被害を受けた新地町では11月、町で初の災害公営住宅として、65歳以上の津波被災者が対象の住宅が完成した。引き渡しを受けた高齢者らが荷物を運び入れ、新たな生活が始まっている。

 同町大戸浜の自宅が津波で流された岩崎芳治さん(78)政代さん(77)夫妻。津波被害を受けて小学校に避難した後、町内の仮設住宅に移り、避難生活を続けてきた。災害公営住宅には11月18日に入居したばかり。室内の片付けや荷物整理に忙しい毎日を送る。「仮設住宅と比べ広いことがありがたい。この家が私たちの最後の家になりそう」。岩崎さん夫妻は新生活の始まりに笑顔がこぼれる。

 入居する年代に関係なく造られた仮設住宅は、高齢者にとって不便なことが多かった。しかし、災害公営住宅は「湯船の高さや台所の水回り、バリアフリーなど配慮されているので使いやすい」。近くに商店や医療機関もあり「散歩がてら周囲を歩けるので良い運動になる」と満足そうだ。息子たちは、転勤が多いため一緒に暮らすことも難しく、夫妻は災害公営住宅への入居を決めた。「家が流されるのを見たときは何も考えられなかった。隣近所は知り合いだし、仲良くゆっくりとここで過ごしていきたい」。岩崎さん夫妻は新しいわが家でくつろぎながら、ようやく再出発した生活に夢を描く。

 新地町では、若い世代も対象に、住宅の自力再建に向けて造成した土地の引き渡しも始まった。震災から1000日を迎える今、津波被災者の生活再建は着実に歩みが進みつつあり、県内の復興を先導している。