『過剰診断』の指摘も 甲状腺検査4巡目、見直し・縮小求める声

 

 東京電力福島第1原発事故発生時に18歳以下の県民を対象とした甲状腺がん検査は東日本大震災の発生から7年目に入り、検査手法の在り方を巡ってさまざまな課題が浮かび上がっている。検査規模の縮小や拡大、対象者への説明と同意の重要性など議論すべきテーマは多く、心の不安を抱く県民に寄り添った対応が求められている。

 甲状腺検査は原発事故の健康影響を調べる県の「県民健康調査」の項目の一つだ。有識者で組織する検討委員会が定期的に開かれ、事故との因果関係を検証している。

 2011(平成23)年度に1巡目の検査が始まり、14年度から2巡目、16年度から3巡目が行われ、18年度から4巡目に入る。昨年12月末現在、「甲状腺がん」と確定したのは1~3巡目を合わせて計160人(手術で良性と確認された1人を除く)で「がん疑い」は計36人。事故との因果関係については検討委の評価部会が15年3月、1巡目の検査結果を踏まえ、「原発事故の影響とは考えにくい」との中間報告をまとめている。部会は現在、2巡目検査の評価を検証しているほか、福島医大が行う検査以外の甲状腺がんを把握するため、県地域がん登録のデータ活用に向けて検討を進めている。

 検査を巡っては、放射線の影響の有無と関係なく必ずしも治療の必要がないがんを見つける「過剰診断」の可能性が指摘されており、検査規模の縮小を求める声が上がっている。県小児科医会は「検査によって子どもや保護者に不安が生じている」として県に検査規模の縮小も含めた見直しを要望。一方で、民間の「311甲状腺がん家族の会」は「"過剰検診"のデメリットはない」として県に規模拡充を求めた。

 検査規模の縮小と拡充の両論の要望を踏まえ、検討委は検査体制の在り方について議論を開始。委員からは放射線の影響の結論が出ていない今、県民の不安解消に向け「現時点では、このまま検査を続けるべきだ」との意見が多数を占める。検討委の星北斗座長(県医師会副会長)は「未来永劫(えいごう)、変えないという訳ではない。委員の意見を尊重しつつ、過不足がない形で対応したい」としており、議論は長期に及ぶとみられる。

 医療関係者「説明と同意、不十分」

 甲状腺検査の手法を巡る議論の中で、医療関係者からは検査対象者への説明と同意が不十分との指摘がある。甲状腺検査評価部会は現状の検査手法の問題点を精査した上で、検討委に進言する方針だ。

 治ることが多い甲状腺がんは、一律のがん検診による「死亡率の低下」というメリット(利益)が生じにくい。このため医療関係者は、検査によって必ずしも治療の必要がないがんを見つける「過剰診断」が増える可能性を指摘する。検査を担う福島医大も「過剰診断の問題や早期診断の利益が少ないということを十分に説明できていない」と認めている。

 検査で見つかったがんと原発事故との因果関係の有無が取り沙汰される中、医療の現場からは因果関係を把握するためだけの検査継続に疑問の声もある。ただ原発事故後の健康影響に不安を持つ県民がいるのも事実だ。県民への説明と同意をどう進めるか。双方が納得した検査手法の「着地点」をまだ見いだせていない。