南米逃亡説をベースに“if”で構成されたナチス映画の新たな系譜『お隣さんはヒトラー?』

(映画)
 
左側に<隣人をヒトラーと疑う>ポルスキー(デヴィッド・ヘイマン)、右側に<ヒトラーに疑われる>ヘルツォーク(ウド・キア)が配置されたポスタービジュアル

 歴史に、“if”はないが、アドルフ・ヒトラーの「南米逃亡説」をモチーフに、実際に起こり得たかもしれない世界線を大胆なアプローチで描いた映画『お隣さんはヒトラー?』が7月26日より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国で公開される。

【画像】映画『お隣さんはヒトラー?』場面写真

 今なお、世界に暗い影を落とすアドルフ・ヒトラーの誕生から135年。日本では、ヒトラー、ナチスを題材とする映画が多数公開。観客の関心度も高く、600万人のユダヤ人のほか、兵士、一般市民を合わせて数千万の尊い命を奪った現実の裏側で、数えきれない悲劇が存在し、幸運にも生き残った人たちによって語り継がれたエピソードも多い。

 いずれもヒトラー、ナチスという「絶対悪」がおり、「被害者」と「加害者」の視点で描かれて、歴史の真実に根差した人間ドラマを中心に、スリラー、サスペンス、アクションと幅広いジャンルの映画で公開されているのも大きな特徴だ。

 本作『お隣さんはヒトラー?』は、ヒトラーの遺体を西側諸国が確認していない点、ナチス高官のアドルフ・アイヒマンなどが中南米に逃亡した事実、2015年に、コロンビアのジャーナリストによってもたらされたCIAの極秘文書の中に、ヒトラーに関する資料を発見、SNSで公開したことなどから、まことしやかに囁かれる「ヒトラー生存説」「南米逃亡説」をモチーフにしている。ユーモラスな前半と、これまでの勧善懲悪とは一線を画すラストのコントラストに、観る者の心を大きく揺さぶる作品に仕上がっている。

 監督は、本作が長編2作目となるレオン・プルドフスキー。隣人をヒトラーと疑うポルスキー役に、英テレビドラマ『ロンドン警視庁犯罪ファイル』(1997~2009年)のマイク・ウォーカー警視役で知られる、デヴィッド・ヘイマン。ヒトラーに疑われるヘルツォーク役に、『マイ・プライベート・アイダホ』(1991年)、『アルマゲドン』(98年)のほか、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)をはじめ、ラース・フォン・トリアー監督のほぼ全作に出演しているウド・キア。

 解禁となった予告編は、孤独な老人の隣に越してきた男がアドルフ・ヒトラーに酷似していたことから始まる。大使館に出向いて隣人はヒトラーだと訴えるが取り合ってもらえない。ならばと、カメラを購入し、ヒトラーに関する本を買い込み、自らの手で証拠をつかもうと行動を開始する。

 正体を暴こうと意気込む奮闘ぶりがユーモラスに描かれる前半から一転、雨の中で隣人から助けを求められたことがきっかけとなり、互いの家を行き来し、チェスを指したり、肖像画を描いてもらうまでの関係になるが、あることがきっかけで、再び、互いに猜疑心を持つように…。果たして、隣人の正体とは?そして、どんな結末を迎えるのか、期待が高まる映像となっている。