【5月26日付編集日記】異文化に触れる

 

 距離を示すとき、普通はキロやメートルが思い浮かぶ。かつて日本では「里」という単位を使っていた。同じように、北欧のフィンランドでは「ポロンクセマ」という単位があるそうだ

 ▼その基準はトナカイが休憩なしで疲れずに移動できる距離。1単位は約7・5キロと、かなり大ざっぱだ。トナカイが身近な地域の人にとっては、便利なのかもしれない。古くから距離は生活に根差した手法で測られており、お国柄が表れる

 ▼自分たちの言葉では、ひと言で訳せないような固有の表現が世界中に存在する。これらを理解することは、文化の違いから生じる問題を解決し、現地の人たちの暮らしを知る手がかりとなるものだ(「翻訳できない世界のことば」創元社)

 ▼いわき市の福島高専で市民が外国語や異文化に触れる講座が始まった。講師はフィンランドとフランスからの留学生。日常会話などそれぞれのお国言葉を通して、母国の美しさを伝えるという

 ▼言葉に込められた感情などを正確に読み解くのは簡単ではない。たとえ国は違っても、同じように泣いたり笑ったりする気持ちを本質的に感じ取れる可能性はある。国境の垣根を低くして、まずはいろいろな外国語に触れてみたい。