【避難指示解除10年/田村・都路】行事復活、地域存続に光

 
市民と懇談する宗像さん(右から2人目)。新しく隊員となる(左から)村越さん、辻本さんに活動を引き継ぐ

 「心に閉まっておかないで。ちょっとしたことでも何でも話した方がいいよ」。田村市復興応援隊として都路地区で高齢者の見守り活動に当たる宗像いみ子さん(71)は優しく語りかける。

 復興応援隊が発足したのは、東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除される約1年前の2013年だった。総務省の復興支援員制度を活用し、市が住民の帰還を見据えて設置した。隊員の活動は都路地区に住む高齢者の生活支援をはじめ、地域のイベントの手伝い、地域新聞の発行と多岐にわたる。

 事業を受託するNPO法人くらスタ理事長の佐原禅さん(48)は「訪問活動や草むしりなど力仕事が必要な時もあり、避難指示解除からその都度、必要な活動を考えて取り組んできた」と地域再生を支えてきた活動を振り返る。

 849世帯約2000人(2月29日現在)が暮らす都路地区では、全国の中山間地域と同様に過疎・高齢化の問題に直面している。宗像さんは隊員として8年近く見守り活動を続け、復興公営住宅に移り住んだ住民や家族と離れて1人暮らしになった高齢者宅を巡り、話し相手になるなど地域住民に寄り添ってきた。

 宗像さんは今月いっぱいで隊員を卒業する。「これからは2人が来てくれるから安心だよ」。後任に就く辻本昌幸さん(60)=大阪府出身=と村越椎菜さん(32)=沖縄県出身=を地域住民に引き合わせ、仕事の引き継ぎに心を砕いた。

 古里で日々の活動に奔走する中で、住民が主体的に地域づくりに携わらなければ「10年後にはこの地域がなくなってしまうのではないか」と宗像さんは強く思うようになった。その危機感を地域で共有し、実を結んだのが行事の復活だ。都路地区でかつて行われていた花嫁行列を再現したイベントが2月に開かれ、大勢の人たちでにぎわった。佐原さんは「この人たちなら、地域の未来を守っていける」と都路が持つ地域力の可能性を展望する。

 辻本さんは「自分たちに宗像さんの代わりが務まるとは思わないけれど、少しでも力になりたい」と決意を語る。「『これから先がどうなるか』ではなく『これから先をどうするか』を心がけ、みんなで考えてやっていきたい」と思案しており、見守り活動以外にも都路地区のためにできることを見つけ、住民と一緒に挑んでいくつもりだ。

 避難指示解除から10年。被災地でいち早く人の営みが戻った都路地区の再生は古里の未来を思う住民、そして新たに移り住んだ人たちの双肩にかかっている。

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 この連載は坂本龍之が担当しました。