「きのこ岩」忘れないで 郡山の名勝、震災で崩落...保全願う住民

 
崩落したきのこ岩。今はさらなる劣化が進まないようにと木のくいを設置し、立ち入り禁止にして保存している

 郡山市逢瀬の浄土松公園内にあるキノコのような形をした巨大な石群で県の名勝天然記念物「きのこ岩」が、東日本大震災の影響で複数の岩が崩れ、立ち入りが制限されたままとなっている。地元で親しまれる名所の危機に、周辺住民からは「人々から忘れ去られないよう保全や伝承を考えてほしい」と願う声が上がっている。

 浄土松公園の駐車場から山道を進むと、全長1~10メートルほどの白い岩が10~20個ほどごろごろと立ち並んでいる場所に着く。この岩が元のきのこ岩だ。郡山市などによると、きのこ岩は海底が隆起し、断層でできた白色の凝灰岩や砂岩などの地層。各地層で風化の度合いが違う関係で、キノコのような形になったという。

 市は震災後、岩の崩落でほとんどがキノコの形を失っていることを確認。劣化が進まないように木のくいで柵を作り、立ち入り禁止にしてきた。また、訪れた人に元の姿を知ってもらおうと、震災前のきのこ岩の様子を写した写真パネルも設置した。自然につくり出されたため元の形に戻すことは不可能だといい、担当者は「今の形を可能な限り維持して保全していきたい」としている。

 浄土松公園は、宮城県の松島の景色に似ていることから「陸の松島」とも呼ばれていた観光スポット。震災前はウオークラリーイベントなどできのこ岩目当てに見学に訪れる人も見られたといい、逢瀬行政センターは「地区では重要な観光資源だった」とする。

 学生時代によく見学に訪れていたという会社員山口恭平さん(28)は「逢瀬のシンボルが崩れてしまい寂しい。これからもみんなの憩いの場となれるよう保全に力を入れてほしい」と求めた。近所に住む伊藤カネさん(84)も「パンフレットで以前の姿を発信するなどして忘れ去られないようにしてほしい」と願った。