避難の心情絵に描いたが...葛藤 9~11日楢葉 鶴田さん作品披露

 
展示作品を手に来場を呼びかける鶴田さん

 「震災から間もなく丸13年。みんなで避難生活を振り返りたい」。広野町の画家鶴田松盛(まつもり)さん(88)は9~11日、楢葉町下小塙の地域活動拠点施設「まざらっせ」で、東京電力福島第1原発事故に伴う避難生活の中で描いた心象風景画約30点の作品展を開く。

 鶴田さんは福岡県出身。勤め先の機械加工会社の転勤で34歳ごろに広野町に移住した。40歳ごろから絵を公募展に出品し始め、数々の受賞歴がある。2021年に解散した双葉郡美術協会の設立に関わり、25年にわたって会長を務めた。83歳で亡くなった妻の故・昌子さんの一周忌を終え、思い出を振り返って追悼するため作品の披露を決めた。

 原発事故後は埼玉県内を転々とし12年6月に自宅に帰還した。この間も創作活動を続けて当時の心情を絵で残した。地震と津波の恐怖と悲しみ、原発事故で着の身着のまま逃げた思い、苦労した避難先の住居確保、誰も守ってくれないとの気持ちを表現した「傘が無い」シリーズ、避難先での寂しさ、帰還した際の湯上がりの妻の絵が並ぶ。

 「避難生活の心情を表現しており、当時を思い出す」と絵を手にする鶴田さん。海中を描いた作品は津波犠牲者の追悼に描いたが、後に「死者を冒涜(ぼうとく)したと非難されかねない」と不安を感じた。妻を亡くしてから絵を見ると「この世に残された人はつらい。その人を慰める意味がある」と印象が変わった。「人間の心情は変わっていくものだ。誰しもがいったん立ち止まり、この13年間を振り返るひとときにしたい」と作品展の意義を語った。

 展示時間は午前9時~午後5時。入場無料。期間中は鶴田さんが会場にいる。