【誉れ高く】芸術文化賞・ややまひろしさん 仕事で人を笑わせたい

 
本紙の連載「ややまひろしのろう漫日記」などの執筆を続けているややまさん。いつも身近に画材を置き、アイデアを作品にしている

 第33回みんゆう県民大賞に選ばれた芸術文化賞の漫画家ややまひろしさん(89)、スポーツ賞の駒沢大陸上競技部総監督大八木弘明さん(64)、ふるさと創生賞のサッカーW杯日本代表同行シェフ西芳照さん(61)。各分野で大きな功績を残し、地域振興などに貢献してきた活動を3回にわたって紹介する。

 サービス精神が原点

 「なんで私が選ばれたのか。今まで全然賞をもらったことがない、しょうがない男です」と、楽しい冗談が口から飛び出す。

 漫画やエッセー、お笑い芸などで人々に長年にわたって笑いを届けてきた。本紙の「みんゆうマンガ大賞」の審査委員長を2019年度まで36年間務め、毎年個性的で面白い作品を選出。14年からは本紙で「ややまひろしのろう漫日記」をイラストとともに毎月1回連載中で、89歳の現役漫画家として活動している。

 「人を楽しませるために笑いの仕事をずっとやってきました」。子どもの頃、家の隣の銭湯にあったラジオで落語や漫談、浪曲、浪花節などを聞いて育った。サービス精神が鍛えられたのは、同市にあった百貨店「中合」に就職してから。「最初は『いらっしゃいませ』もなかなか言えなかったが、お客さまと話せないと仕事にならない。お客さまに喜んでもらえる対応の仕方が自然と身に付いていった」と振り返る。

 42歳で中合を退社した後はアクセサリー販売の会社を営み、1997年の会社解散以降は笑いを発信する活動に注力。漫画と、漫談や物まねなどのお笑い芸、イベントの司会や講演に加え、本の執筆なども手がけた。

 「百貨店出身だから、何でもできるんです。あらゆることに興味を持ち、いろいろなことを若い時からやってきた。面白い、楽しいと感じることや、人が喜んでくれることは長続きしています」と、自らの多彩ぶりの理由を分析する。

 時代とともに人の考えや流行は変わっても「笑いによって救われることは時代に関係ない」と考えている。「笑うと健康にもいいし、ストレス解消にもなるし、人間がゆったりした気持ちになる。心にゆとりを持ち、『笑って生きていた方が幸せなんだ』とみんなが思ってくれたらありがたい」と願う。

 近年は病気と闘いながらの活動が続く。ろう漫日記の連載が「生きがい」といい、いつも頭の中でどういうテーマでどう書こうかとアイデアを練る日々だ。高齢者施設のショートステイも「温泉に行ったつもりで」気軽に利用しており「冗談を言うと職員の皆さんがゲラゲラ笑っています。まるで職員の方を喜ばせるために行ってるようなものですよ」。得意の話芸で周りを楽しませている。

 病やけがなど、大変なことが続いても乗り越えてこられた秘訣(ひけつ)は「いつも自分自身を客観的に見て『またヘマやっちゃって』と笑っているから」と明かす。「自分のことであまり深刻に悩まない。若い時はストレスを感じることもあったけれど、年を取って『大したことない』と思えるようになった。今になって、しぶとく生きてます」

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 ややま・ひろし 福島市生まれ。福島商高卒。中合勤務を経て1975年に独立し、アクセサリーなどを販売する会社を設立。97年の会社解散後は漫画やエッセーなどの執筆、講演活動などを行う。日本漫画家協会員、福島ペンクラブ会員、うつくしま芸人会顧問。