【誉れ高く】スポーツ賞・大八木弘明さん 世界で戦える選手を

 
田沢選手を指導する大八木さん(左)=4月、駒大玉川キャンパス

 第33回みんゆう県民大賞に選ばれた芸術文化賞の漫画家ややまひろしさん(89)、スポーツ賞の駒沢大陸上競技部総監督大八木弘明さん(64)、ふるさと創生賞のサッカーW杯日本代表同行シェフ西芳照さん(61)。各分野で大きな功績を残し、地域振興などに貢献してきた活動を3回にわたって紹介する。

 「常勝」駒大、情熱続く

 「駒沢大は世界に挑戦していく」と語るのは、駒大陸上競技部総監督の大八木弘明さん(64)=会津若松市河東町出身、東京都在住。陸上競技に人生をささげ、母校・駒大を率いてチームを立て直し、大学三大駅伝で27回の優勝を果たした。昨年度、史上5校目の3冠達成を花道に監督を退き、今年4月から総監督として新たなスタートを切った。

 高田一中(現高田中)で陸上競技を始めると全国大会で入賞し、頭角を現した。「この頃の夢は陸上選手。引退後は高校教師として陸上を指導したいと考えていた」。だが、会津工高時代はけがや貧血に苦しみ、結果を残せなかった。後悔を胸に刻みつつ、大学進学を諦め、小森印刷(現・小森コーポレーション)に就職して実業団で競技を続けた。

 「好成績が出せるようになり、進学の思いが再燃した」。24歳で駒大夜間部に入った。「昼は川崎市職員として小学校の事務、夜は勉学にいそしむ。合間に練習する多忙な日々だった」。卒業後はヤクルトの実業団の選手やコーチを務めた。初めて指導者となり「情熱を注いだ選手が結果を出し、喜びを共有できる醍醐味(だいごみ)を感じた」と振り返る。

 1995年、成績不振だった駒大のコーチに就任。練習内容や食生活、規則正しい生活といった改革を進めた。選手は力を付け、箱根駅伝4連覇を遂げるなど「常勝軍団」と呼ばれた。

 しかし駒大はその後10年以上も箱根駅伝で優勝できない時期が続いた。優勝どころかシード権も失った。「私の心におごりが生じ、指導への情熱が欠けた。学生の気質の変化にも対応できていなかった」と反省する。そこで自身の指導を見直し、情熱を再燃させることを決意。「抑え付ける指導を続けていたが、今どきの学生は厳しさに慣れていない。学生と同じ目線でコミュニケーションを取って成長を促すようにした。選手と指導者の信頼関係も築いた」。常勝軍団の輝きを再び取り戻したのが、昨年度の大学駅伝3冠だった。

 後任は「大八木1期生」で白河市出身の藤田敦史監督(46)=清陵情報高卒、元マラソン日本記録保持者=で、2015年から駒大コーチを務めてきた。「私の良いところ、悪いところは分かっているはず。良いところを思い出して藤田流の指導をしてほしい。戦力はそろっており、2年連続3冠も狙える」と期待した。

 駒大の指導者として29年目に入ったが「まだまだ発展途上。これからも現場主義を貫き、世界を目標に掲げる選手を育てたい」と意気込む。総監督となった今も実業団に進んだ田沢廉選手(トヨタ自動車)をはじめ学生の主力選手を指導しており「五輪や世界選手権に出場する選手を育てる。新たな世界に挑戦していきたい」と気を引き締めた。

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 おおやぎ・ひろあき 会津若松市出身、都内在住。会津工高卒業後、実業団を経て駒沢大に進み箱根駅伝で活躍。1995年に駒大のコーチとなり、2004年から監督。大学三大駅伝で27回の優勝を果たし、22年度は念願の3冠を達成。今年4月、総監督に就いた。