脳卒中について。その20

 

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。公立藤田総合病院(国見町)副院長で脳神経外科医の佐藤晶宏先生のお話です。
脳卒中について。その20
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

   

 脳卒中のリスクの2番目は糖尿病です。今回と次回は糖尿病について詳しくお話をします。

 糖尿病は発症要因から大きく1型、2型に分けられます。日本人では糖尿病患者さんの約95%が2型糖尿病と言われ、「暴飲暴食」「運動不足」「ストレス」「肥満」などのライフスタイルの乱れが主な原因となって発症します。生活習慣病の1つがこの2型糖尿病です。そのため2型糖尿病の場合は、こうした原因に気を付けて日常生活を送ることができれば、発症予防となります。

 1.食生活

 糖尿病治療の基本は食事療法です。食事療法が効果的なのはなぜでしょう。通常、私たちは食事を取ると血糖が上がります。するとインスリンというホルモンが膵臓から分泌されて血糖を下げます。2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリンが効きにくい状態です。元来、インスリンを分泌する量が欧米人に比べて少ない私たち日本(アジア)人が、欧米化した食生活や食事を多く取りすぎれば糖分の処理が追いつかなくなり、血糖値は上がりっぱなしになります。この状態が毎日続けば、膵臓のインスリンを分泌する力は衰えてしまいます。食事療法の基本的な考え方は、カロリー(エネルギー)を必要以上に取らないようにすることです。バランスの取れた栄養を1日の必要量のカロリーで取ることで膵臓の負担は軽くなり、膵臓の十分な能力は回復されます。ですから食べすぎやインスリンをより多く必要とするメニューを控える食事内容が、糖尿病治療にはとても効果的なのです。これは、今は糖尿病でない方にとっては効果的な予防法になります。ちなみに、糖尿病に良い食品、悪い食品というものはありません。どんな食品でも取りすぎなければ体に良いし、取りすぎれば体に悪いということです。糖尿病の方は、食事療法を始める際に医師や栄養士から渡される食事指示票(食事指導票)に従って、食品交換表を活用しながら1日の総エネルギーを守った、バランスの取れた食生活を送ることが大切です。糖尿病でない方も、ぜひ参考にしてください。決められたカロリーの範囲内でタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく取る工夫が大切です。食品のカロリーや栄養素を知ることができる食品交換表は、私たちの食生活にいかす目安として、とても良いガイドになってくれます(図1)
 食品交換表とは、糖尿病患者さんのための食事を組み立てる際に用いる表です。適正な量で栄養バランスの良い献立づくりの手助けとなります。食品交換表では、80キロカロリーを1単位として計算します。表は1から6までに分かれています。例えば、ご飯は表1の「主食」に分類されます。ご飯は50グラムで1単位、つまり50グラムで80キロカロリーです。
 「食品交換表」は炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、それぞれの栄養を主に含んだ食品を6種類に分類したものです。食品が含むエネルギー量80キロカロリーを1単位と決めて、表の同じ分類に属するなら、どの食品を取っても良い仕組みになっており、食事の内容を多彩にすることができます。自分の今までの食生活を知ることができたら、正しいエネルギー量の範囲で、おいしく楽しく食べる工夫をしてみましょう。長く続けていくことが糖尿病にならない体をつくる秘訣です。

表1 主食

 体を動かす力の源となる食品です。ご飯やパン、麺類、いも類など、炭水化物を多く含む食品が表1にあたります。1日3食均等に食べることが大切です。

表2 果物

 果物は表2に分類されます。食物繊維やビタミンC、ミネラルなど、体のコンディションを整える成分が多く含まれますが、果糖やブドウ糖も多く含むので、取りすぎには注意しましょう。1日あたり片手に乗る程度の量が目安です。

表3 主菜

 筋肉や血液のもとになる、身体をつくる食品のグループです。肉や魚介、卵、チーズ、大豆製品など、良質なタンパク質が豊富に含まれています。主菜はビタミンB群やミネラルの供給源でもあります。部位によっては脂質も比較的多く含みます。主菜も1日3食均等に取り入れましょう。

表4 乳製品

 牛乳、ヨーグルトなどの乳製品です。ただし、チーズはここではなく表3の主菜に含まれるので注意しましょう。カルシウムが豊富で、牛乳であれば1日180ミリリットル程度が目安です。

表5 油脂類

   バターやサラダ油、肉の脂身、アボカドなどの油脂類を指します。1グラムあたりのエネルギー量が多いので、バランスを意識して取ることが大切です。また、取るのであればLDL(悪玉)コレステロールを増やす動物性(特に肉)の脂ではなく、悪玉コレステロールや中性脂肪を下げる役割を担う植物性の油や、魚に含まれる油を摂取しましょう。揚げ物・炒め物など油を多く使った料理は1日2品が目安になります。

表6 副菜

 体の調整役を担う食品が表6に分類されます。具体的には野菜やきのこ、海藻類などが代表的です。エネルギー量が少なく、食物繊維やビタミン、ミネラルの供給源になるため、積極的に取り入れたい食品と言えます。野菜は1日350グラム以上の摂取が推奨されています。1食あたりの副菜量の目安は、生野菜であれば両手に乗る程度、温野菜であれば片手に乗る程度です。

付録 調味料

 砂糖、みそ、しょうゆや市販のルーなどの調味料が付録に分類されます。
 糖尿病患者さんが食事から取る適切なエネルギー摂取量は、年齢や性別、身体の大きさ、運動量によって1人1人異なります。医師や医療スタッフは、こうした違いを考慮したうえで、その患者さんに合ったエネルギー摂取量(指示エネルギー量と言います)を決めます。食事のポイントを図2に示しました。

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 次回は糖尿病予防の運動についてお話します。

月号より