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放課後児童クラブ...夜も味方 郡山のNPO、県内初「夕食付き」

 
施設で夕食の弁当を楽しむ児童たち。緑川さん(奥)は「子どもも親も夢や希望を諦めないことをビジョンにしている」と話す

 NPO法人「makana(マカナ)」は郡山市八山田で、県内初の夕食付きの放課後児童クラブ「makana 郡山八山田ベース」を運営している。開設のきっかけは、夜遅くまで子どもを預かれる施設をつくることで子育てと仕事の両立を支えたい、との思いからだ。県内各地に同様の施設を設ける考えもあるといい、緑川浩郎代表理事(50)は「子どもと親が夢を諦めない社会をつくりたい」と思いを語る。

 クラブでは午後6時半を回ると、夕食の弁当が運ばれてきた。法人に協力する地域の飲食店やスーパーなどが作ったもので、1食350円。利用者の希望日に提供される。この日は揚げ物や炊き込みご飯が載った弁当で、児童たちがうれしそうに頬張っていた。

 設立の動機は、緑川さんの「前職での反省」だ。会社員時代に事務員採用の担当だった際、小さい子どものいる母親やシングルマザーは「子育てなどで休まれると営業所が機能しなくなる」という不安から不採用にしていた。

 その後、会社の工場で若い女性のパート社員と話す機会があった。女性は正社員になりたいが、シングルマザーであることが影響して、工場勤務のパートとして働かざるを得ないという。「自分が不採用にしてきたような人たちがこのような思いをするのか」。ショックだった。同時に、母子家庭の平均所得が一般的な家庭と比べると低いことや、子ども世代も貧困になる連鎖があることを知った。

 一般的な放課後児童クラブの開所時間は遅くとも午後7時ごろまでで、夕食も付かない。緑川さんは遅くまで子どもを預けられないため、仕事に制限がかかる人もいると考えた。「親が自由に働けるように、子どもを預けられる場所をつくろう」。一念発起して会社を退職。2022年11月に午後8時半までの預かりが可能で、夕食も提供可能な児童クラブを設立した。

 開設から1年半がたつ中で利用者から子育ての負担が軽減されているとの声も聞こえる。2人の子どもを通わせている会社員の女性(44)は「迎えが7時過ぎになるのでご飯が出るのはうれしい」と話す。

 ひとり親世帯だけでなく「看護師などエッセンシャルワーカーの(子育ての)お手伝いをしたい」と話す緑川さん。「今後もさまざまな場所で展開したい」と、誰もが夢や希望を持てる社会の実現を目指す考えだ。(津村謡)

 子ども食堂代表も歓迎

 子どもの食事を提供できる場所としては子ども食堂があるが、毎日の食事提供は難しい現状がある。ふくしまこども食堂ネットワークの江川和弥共同代表によると、子ども食堂はボランティアによる運営に加え、開催のたびに公民館などを借りる団体も多いという。コストなどがかかる関係で、週に数回の提供にとどまるという。

 こうした状況もあり、子ども食堂などボランティアで行われている活動が放課後児童クラブなどに機能移転することについて、江川代表は「望ましいことだと思う」と評価している。