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昨年から45カ所増、子どもの居場所拡大 町村部の担い手不足が課題

 

 学校や家庭以外で子どもに食事や居場所を提供する子ども食堂をはじめとする「子ども・若者の居場所」の県内設置数が昨年1年間で45カ所増加し、計174カ所(1月1日時点)となったことが県への取材で分かった。新型コロナウイルスの5類移行に伴い、設置数が大きく拡大。設置自治体も県内59市町村の半数を超える31市町村となり、子どもを取り巻く環境が改善している。一方、担い手不足などを理由に設置が進まない自治体もあり、地域による偏りが課題となっている。

 県によると、子ども食堂や、子どもが勉強や遊びなどで交流する場の設置状況は【表】の通り。県内では子どもの貧困対策などを背景に、民間中心で子どもたちの成長を支える居場所の整備が続いてきた。

 しかし、新型コロナ感染拡大の影響で設置数の伸びは一時停滞した。昨年5月の5類移行により、活動に制限がなくなったことなどから、新設の動きが再び活発化し、昨年は1年間で約1.3倍の増加となった。

 ただ、設置数拡大に伴い地域差がより鮮明になっている。県内174カ所のうち、8割を超える147カ所が13市に集中し、町村への設置数は27カ所にとどまる。地域による偏りも大きく、中通りに131カ所が集中している一方、浜通りは26カ所、会津は17カ所と差があるのが現状だ。

 子どもの居場所の県内運営団体でつくる「ふくしまこども食堂ネットワーク」の江川和弥代表(59)は地域差について「都市部は支援が行き届いており増加傾向にあるが、郡部には担い手が少ない問題がある」と指摘する。江川代表によると、人口の少ない町村部では担い手となる人材が既に別の活動に取り組んでいる場合が多く、子ども食堂などの運営にまで手が回らない状況にあるという。

 このため同ネットワークは、子ども食堂などの運営も支援しており「活動の知識を伝えることで郡部でも設置が広がることがある。自分たちの経験を伝えて担い手を増やしたい」と活動の広がりに期待する。

 県も設置団体を支援

 新たな居場所づくりを巡っては、県も支援に乗り出している。専門家が子ども食堂運営のノウハウなどを伝える研修会を開催しているほか、新たに設置を検討する団体の活動も後押ししている。昨年度に研修会を開いたいわき、田村の両市で居場所が新設されるなど効果が表れているという。

 県は「子ども・若者の居場所は異世代交流にもつながり、子どもの情操を育む上で重要」(こども・青少年政策課)とみて、県内各地への設置拡大に向けた支援を続けていく考えだ。