脳卒中について。その21

 

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。公立藤田総合病院(国見町)副院長で脳神経外科医の佐藤晶宏先生のお話です。
脳卒中について。その21
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

   

 脳卒中のリスクの2番目は糖尿病です。今回、糖尿病の運動療法をお話する予定でしたが、もう少し食事療法についてお話をします。
 2型糖尿病の食事療法の目的は、全身における正常な代謝状態を維持することにより、併発症を予防し進行を抑制することです。まず、治療開始時に総エネルギー摂取量の目安を設定し、患者さんの病態、年齢、体組成、代謝状態の変化を踏まえ、適宜変更することが大切と言われています。食事のポイントについては前回の脳卒中についてその20を参考にしてください。では、目標とする体重は、そして実際に1日にどれぐらいのカロリーを取れば良いのでしょうか。

1.目標体重の目安

 肥満を伴った2型糖尿病は、糖尿病の基盤病態の一つである内臓脂肪蓄積型肥満によってインスリンが効きにくくなることを背景として発症します。その予防と管理には、肥満の是正が重要になります。目標となる体重は患者さんの年齢、病態などにより異なることを考慮し、個別化を図ることが必要です(図1)。

2.1日に必要なエネルギー量

 総エネルギー摂取量は、目標とすべき体重により計算されます。1日当たりの適正なエネルギー量の計算式があります(図2)。
 体格(身長・体重)と身体活動量で、1日の食事で摂取する適正なエネルギー量が決まります。性別・年齢・血糖コントロール・合併症の有無などによって、糖尿病の患者さんごとに状況が異なり、計算式に当てはまらない方もいます。実際には、主治医と相談して決めましょう。
 例:身長170㎝でデスクワークが多い人の場合
 ・標準体重:1.7(m)×1.7(m)×22=63.58(kg)
 ・身体活動量:軽労作となるため、身体活動量は、25~30(kcal/kg標準体重)
 ・1日の食事で摂取する適切な総エネルギー量:63.58(kg)×25~30(kcal/kg標準体重)=1589-1900(kcal)
と、計算できます。

3.栄養素の配分・バランスの取れた食事

 エネルギーの元となる三大栄養素は、炭水化物・たんぱく質・脂質です。
 ・炭水化物:ブドウ糖となり、私たちの体のエネルギー源となる
 ・たんぱく質:筋肉や臓器など体を形作る重要な栄養素
 ・脂質:身体のエネルギーとなり、ホルモン、細胞などを作る材料となる
 それぞれ、身体の中では欠かすことのできない栄養素です。
 また、骨や歯の材料となるのは、カルシウムなどのミネラルです。身体の働きを正常に保つためにも、さまざまなミネラル(鉄・銅・亜鉛など)やビタミンなどが必要です。体を作り、体の調子を整えるには、さまざまな栄養素をバランス良く食べることが大切です。
 では、バランスの取れた食事とは、どんな食事でしょうか?
 いろいろな栄養素を適量に取るのがバランスの取れた食事です(図3)。
 具体的には、主食(ごはん、パン、めん類など)、良質なたんぱく質を含むおかず(魚類、大豆製品、卵、肉類など)、野菜、きのこ、こんにゃく、海藻、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)、果物など1日の中でいろいろな食品を組み合わせて摂取することで、バランスの良い食事に近づきます。
4.炭水化物、たんぱく質、脂質の配分例
 ・炭水化物:摂取エネルギーの50~60%
 ・たんぱく質:標準体重1㎏当たり 1.0~1.2g(1日約50~80g)
 ・脂質:摂取エネルギーの20~25%
 適正なエネルギー量の範囲内で、バランスの良い食事を取るために参考になるのが、前回お話をした「糖尿病食事療法のための食品交換表」です。食品交換表を活用することで、日々の献立づくりの幅が広がります。  では、炭水化物摂取量が多いと糖尿病が発症するのでしょうか。実は炭水化物摂取量と糖尿病発症リスクについては明らかな相関はないと言われています。また、純粋果糖(果物)も一定量までは糖尿病に影響は与えないとされています。1単位(80kcal)程度なら摂取を勧められますが、ショ糖を含む甘味やジュースは血糖コントロールを悪化させたり、メタボリックシンドロームの助長を招いたりする可能性があり、控えるべきと言われています。たんぱく質の摂取量は糖尿病性腎症に影響を与えないとされております。
 脂質摂取量と糖尿病発症リスクの関係も明らかではありませんが、動物性脂質(飽和脂肪酸)の摂取は糖尿病発症リスクとなるので控えるべきとされています。また、食物繊維は糖尿病状態の改善に有効であり、炭水化物摂取量とは無関係に20g/日以上の摂取が勧められています。

 栄養相談を受けるにあたって

 食事療法を実践するにあたって、管理栄養士による栄養指導が有効です。栄養相談を受けられる際は、普段食べている食事の写真や食事記録があると、より具体的なアドバイスを受けることができるかと思います。食事写真や食事記録はどんな形でも結構ですので、栄養相談の際にお持ちになると良いでしょう。

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 次回は糖尿病の運動療法についてお話します。

月号より