常磐もの、魚文化を発信 いわきに「体験型鮮魚店」26日開店

 
再オープンを控え「常磐もののブランド力を高めるためにも、また一から進めていきたい」と気持ちを高ぶらせる小野崎さん

 福島県いわき市の水産品販売業「おのざき」が大規模改装を進めていた旗艦店「鮮場やっちゃば平店」が26日、再オープンする。基本理念は魚を見て、感じて、味わえる「体験型鮮魚店」。プロジェクトリーダーで創業家4代目の小野崎雄一さん(28)は「おいしい『常磐もの』の話題性を高め、ブランド力を高めていく」と力を込める。

 わらを赤く染める炎と、もくもくと上がる煙が代名詞の「カツオの火山(ひやま)(わら焼き)」や魚をじかに触れるプール、アンコウのつるし切りの実演―。東北最大級の売り場面積を誇る新たな店舗では、いわき市の魚文化を「目の前」で堪能できる仕掛けを施している。

 接客の売りは、対面販売だ。長方形の売り場の内側に従業員が立ち、一人一人の客の要望を聞きながら魚を売る。多くのスーパーが効率を重視しバックヤードと売り場を隔てており、対面販売は非効率な方法という。

 それでも小野崎さんは、客と直接触れ合うことでいわき市に根付いてきた魚文化を広く発信できると考える。「この文化は絶対に残したいんです」

 おのざきは昨年、創業100周年を迎えた。東京電力福島第1原発で昨年8月に始まった処理水の海洋放出に伴う「応援消費」も落ち着いてきたという。小野崎さんは「今こそ新たなチャレンジが必要」と思案、平店の改装を決めた。費用の一部はクラウドファンディングで募った。多くの支援が集まり「100年の信用を実感した」と消費者への感謝は尽きない。

 "改装"は店舗にとどまらない。従業員の仕事への姿勢や考え方を改めるために1カ月間の研修も設けた。「『いらっしゃいませ』など接客の基本から泥くさく見つめ直した」。創業100周年にちなみ「100個の改善点」も出し合った。

 新店舗で一からスタートするとの思いを込め、名称も「おのざき鮮場やっちゃば平総本店」に変更した。再オープンが近づき、スタッフが慌ただしく動く売り場に立ち「2度目の創業1年目。わくわくする」と小野崎さん。老舗鮮魚店の新たな挑戦が始まる。

 営業時間は午前8時半~午後7時。26日午前8時からオープニング式典が行われる。(折笠善昭)