【処理水の波紋】東京電力、ミス続出 揺らぐ安心と信頼

 
2月に開かれた県廃炉安全監視協議会で相次ぐトラブルを受けて謝罪した東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者。関係者からは東電の安全管理体制を疑問視する声が相次いでいる

 「周辺海域のモニタリング(監視)の結果などから、放出は計画通り安全に進んだと考える」。本年度に予定されていた約3万1200トンの放出が完了した17日、東京電力の担当者はきっぱりと言い切った。ただ、廃炉作業全体では協力企業作業員の身体汚染や、汚染水が含まれる水の漏えいといったトラブルが相次ぐ。廃炉だけではなく、放出の大前提ともいえる安心と信頼が揺らぎかねない事態となっている。

 「人がやる作業ではミスもあればトラブルも起きる。ただし、あってはならないのが違反だ」。前原子力規制委員長の更田(ふけた)豊志(66)は廃炉作業で相次ぐトラブルを受けてこう切り出した。更田が指す違反とは、昨年秋、福島第1原発の増設多核種除去設備(ALPS)の配管洗浄中に、協力企業作業員が放射性物質を含む薬液を浴びた問題のことだ。

 薬液の飛散は、配管を洗浄する際に発生したガスの勢いで、タンクにつながるホースが外れるなどして発生。作業手順書に書かれていない弁操作が行われていたことや、汚染を防ぐための雨がっぱを着用していないなど人為ミスも重なった。原子力規制委は廃炉手順を定めた実施計画の「軽微な違反」と評価。更田は「違反というのは、(構内の)規律の問題。東電は非常に反省するべきだ」と猛省を促した。

 管理体制を疑問視

 だが、今年2月にも、汚染水の浄化設備がある建屋から放射性物質を含む水が漏えいする問題が発生。増設ALPSのトラブルを踏まえ、再発防止対策を他の廃炉作業にも水平展開している中での再度の人為ミスに、県や県議会からも東電の管理体制を疑問視する声が上がった。原子力規制委は、実施計画違反の疑いがあるとしている。

 知事の内堀雅雄(60)は、トラブルが相次ぐ状況に対し、現時点では直接関わっていないと前置きをしながら「処理水放出に対する国際的な信頼性の問題にも関わってくる」と事態の重大さを厳しく指摘。「信頼関係にひびが入る」ともくぎを刺した。

 東電は廃炉の完了時期とする2051年までに第1原発で保管する処理水の全量を放出する計画だ。初年度の放出は目立ったトラブルもなく終了したが、更田は「あれくらいはちゃんとやってほしい」と打ち明けた上で、東電に注文した。「海洋放出は始まったばかりでこれからだ。(作業が)安定して(国民に)信頼されて、信用を築いていくことを求めたい」(文中敬称略)