事故絶えない「第4種踏切」...廃止進まず 県内94カ所、生活影響

 
2年前の事故を受け、通行止めとなった第4種踏切を通過する飯坂線。悲惨な事故をなくすため、対策が急がれる=福島市飯坂町平野

 警報機も遮断機もない「第4種踏切」への対策が進まない。2年前の福島交通飯坂線での死傷事故を契機に鉄道会社は廃止を進める考えだが、住民の合意が得られず、県内には94カ所の第4種踏切が残ったままだ。全国で事故が後を絶たない状況の中で対策は必須だが、費用面から代替策も難しく、専門家は「自治体を交えた対応が必要だ」と指摘する。

 危険性認識

 「使わないと生活が不便になる。廃止は困る」。買い物などで自宅前の第4種踏切を毎日利用しているという、飯坂線の沿線に住む福島市の男性(72)は切実な思いを語る。一番近い警報機と遮断機のある踏切を使っても、線路を渡るのに5分以上かかる。危険性は認識しつつも「廃止以外の策はないものか」と、対応を求める。

 2022年4月の飯坂線の事故では電車と軽乗用車が衝突し、2人が死傷した。第4種踏切の危険性は認知されており、市交通対策協議会は昨年、飯坂線に25カ所ある第4種踏切のうち、事故があった場所と使用頻度の低い踏切の計2カ所を応急的に通行止めとした。

 また市は昨年度、ほかの16カ所に注意喚起の看板やカーブミラーを設置。残る7カ所にも同様の対応を行う方針で、福島交通の担当者は「自治体の支援があり素早く対策できた」と話す。一方、廃止に向けた住民との合意形成については進んでおらず、「粘り強く交渉するしかない」とした。

 多額の費用

 県内のほかの鉄道会社も廃止へのかじを切るが、会津鉄道(会津若松市)の担当者は「地域住民から『廃止しないで』との要望があり、着手できていない」と説明する。第1種踏切に切り替える場合は多額の費用がかかるといい、鉄道貨物輸送を担う福島臨海鉄道(いわき市)の担当者は「新たに電気を通す必要がある。少なくとも1機1千万円はかかるのではないか」と内情を明かす。

  介入も必要 群馬県高崎市では今月6日、上信電鉄の第4種踏切で、小学4年の女児が電車にはねられて死亡した。鉄道工学などが専門の日大生産工学部の綱島均(ひとし)特任教授(65)は、度重なる事故を踏まえ「第4種踏切は可能な限り廃止するべきだ。廃止が難しいにしても現状のまま放置するのは危険だ」と警鐘を鳴らす。廃止や代替策については「自治体の介入も必要だ。利便性は分かるが命の方が大切。住民の意識改革も欠かせない」と訴える。(三沢誠)

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 第4種踏切 列車の接近を知らせる警報機や遮断機のない踏切。生活道だった場所に後から鉄道が通ったなど、地域によってできた経緯は異なる。このほか、警報機と遮断機のある「第1種踏切」、一定時間に限って踏切保安係が遮断機を操作する「第2種踏切」、警報機と標識のみある「第3種踏切」がある。現在、第2種踏切の設置はない。

県内の路線別の第4種踏切の数