【選挙区割り見直し・変わる戦略(上)】 「新4区」早くも火花

 

 衆院選挙区画定審議会(区割り審)が安倍晋三首相に勧告した区割り改定案が、県内政界に波紋を広げている。会津全域を範囲とした福島4区に、3区から県南の西郷村を編入する方針が示された。県内では1994(平成6)年の小選挙区制導入以来、23年ぶりに衆院の選挙区が変わる。3、4区を地盤とする議員や党関係者は困惑しながらも、次の決戦をにらむ。

 村民不安解消に意欲

 「西郷村が県南から分断されることがないよう配慮したい」。区割り改定案の勧告から一夜明けた20日午前、福島4区選出の民進党現職・小熊慎司は、西郷村役場で村長の佐藤正博と面会し、村民の不安解消に向けた尽力を約束した。小熊はこの日、西郷村商工会にも足を運ぶなど、早くも「新・福島4区」での政治活動をスタートした。

 2014(平成26)年の前回衆院選で、4区は小熊が自民党現職の菅家一郎に416票差で勝利、菅家も比例東北で復活当選した。

 新たな区割りで衆院選が行われた場合、有権者数1万6413人(3月2日現在)の西郷村は勝敗の行方を左右する大票田だ。「なるべく早くあいさつに伺い、村の課題や要望を受け止めたい」。20日は国会審議のため帰福できなかった菅家もまた、西郷への早期訪問と村民の不安解消に意欲を見せる。

 名簿を共有し連携

 西郷村が4区に編入されると、町村では最大の票田が抜ける3区にも影響は出る。前回、元外相玄葉光一郎(民進)は西郷村で、初陣の上杉謙太郎(自民)の約2倍に当たる4524票を獲得した。次期衆院選での再戦が確実視される玄葉と上杉もまた、変化する「決戦の場」へと対応を急ぐ。

 上杉は20日、支援者との電話対応に追われた。西郷村が会津と同じ中選挙区制の旧福島2区を構成していたころ、渡部恒三(元民主党最高顧問)の強固な地盤だった歴史も踏まえ、支持者からは区割り見直しを前向きに捉える声もあった。しかし上杉にとっては5月にも西郷村に後援会をつくろうとしていた矢先だった。「西郷で勝たないと勝負にならないと思ってやってきた」。上杉は党員名簿の共有など菅家と連携しながら、西郷で政治活動を続ける考えだ。

 「今回の改定案は生活圏や住民意識と乖離(かいり)している。今度は3区を補完する区割り変更を迫られる可能性がある」。玄葉は今回の見直しに批判的で、将来の区割り見直しで再び、西郷村が自らの選挙区に編入される可能性を指摘する。

 玄葉の連合後援会長は元西郷村長の菊地国雄だ。玄葉は今後も菊地に後援会長を続けてもらう考えだ。陣営関係者は「引き続き西郷村のまちづくりに協力したい。後援会組織もそのままにする」と言い切った。(文中敬称略)