現・元が序盤から激戦、コロナ対応で応酬 南相馬市長選ルポ
23日投開票の南相馬市長選で、再選を目指す現職の門馬和夫(67)=無所属=と返り咲きを狙う元職の桜井勝延(66)=同=の両候補が序盤から激しくぶつかる。201票差で勝敗を決した前回と同じ顔ぶれでの選挙戦。告示後初の週末を迎えた15日、各陣営は新型コロナウイルスの急拡大によって戦略の練り直しを余儀なくされながらも街頭演説などで精力的に支持を訴えた。(敬称略、報道部・渡辺美幸)
「知恵を出し、力を合わせる体制をつくることで一つ一つ実現してきた」。15日、街頭演説に立った門馬は初当選時に掲げた38の公約に触れ、声を張った。陣営はワクチンの早期接種や雇用創出、待機児童解消など実績をアピール。事務所入り口には「継続で、さらに前進」の文字が際立つ。
出陣式でも、門馬を推薦する自公の国会議員や県議、相双地方の首長らが実績を列挙。門馬市政で国や県とのつながりが強くなったとして「復興のスピードがみるみる上がった」と評する。選対本部長の市議平田武(73)は「4年間にまいてきた種が実になりつつある。市政継続の必要性を訴えていく」と力を込める。
同市でも新型コロナの感染者が増える中、告示日に遊説を中断して対策本部会議を開いたり、毎夕に3回ずつ予定していた個人演説会を取りやめたりと対応に追われながらの選挙戦だ。
桜井は感染拡大を受け15日に予定していた総決起大会を中止し、道の駅南相馬近くでの街頭演説に切り替えた。「命を守り、未来を築く」を掲げ、加速する少子高齢化やコロナ禍による活力の低下など現市政の取り組みを批判。「子育て世代や若い人が戻ってくるための支援、高齢者が不安に陥らないような支援をしていく」と決意を語った。立憲民主の国会議員や県議らが応援に駆け付け、震災時に市政運営を担った桜井の手腕をそろって評した。
前回僅差で苦杯をなめた桜井は昨年夏、先んじて立候補を表明した。市内をくまなく回り、会員制交流サイト(SNS)も駆使して市民の声を聞いてきた。前回、桜井を推薦した連合福島、支援した共産などが今回は自主投票としたが、選対本部幹事長の小林五月(66)は「徹底して草の根の戦いを展開していく」と自信をのぞかせる。
震災と原発事故で加速した人口減少や地域医療の再生、福島ロボットテストフィールドを核とした産業振興など山積する課題に加え、感染流行の「第6波」のさなかでの選挙戦。今後4年間の市政運営を占う重要な政策を市民にどう伝えるかも、一つの鍵となる。
◆南相馬市長選立候補者(届け出順、敬称略)
門馬和夫 67 市長 無現
桜井勝延 66 農業 無元