「地方創生とは逆行」 衆院区割り改定案に福島県選出国会議員

 

 16日に示された衆院小選挙区の新たな区割り改定案では、本県の定数が5から4に減り、選挙区の境界が大幅に変わる内容となった。本県関係の衆院議員は議席減に「復興を望む県民の声が国政に届きにくくなる」と懸念する。秋の臨時国会で予定される勧告を踏まえた公職選挙法改正案の審議に向け、一部議員は早速、改定案に異議を唱える構えを見せる。

 自民党の議員からは改定案に反対の声が相次いだ。福島1区を地盤とする亀岡偉民議員(比例東北)は「人口の多寡で議員定数を決める手法はいかがなものか。復興の加速化に向け、地方の声を聞くという政権の姿勢に反する」と苦言を呈した。

 根本匠元厚生労働相(福島2区)は「勧告は重く受け止めるが、地方の民意が届きにくくなる」とし「『1票の格差是正』と『民意の反映』のバランスを考慮し、選挙制度の不断の見直しが必要」と訴えた。

 福島3区が地盤の上杉謙太郎外務政務官(比例東北)は「復興は途上で県選出議員の存在は重要。(改定案は)到底受け入れられない」と反発。「地方の声が反映される選挙制度への抜本改革を議論する」と述べた。

 福島4区が地盤の菅家一郎議員(比例東北)も「地方創生を進める流れと逆行している」と指摘。格差是正に向けては「3増3減」も選択肢だと主張し「議論していく必要がある」と述べた。

 吉野正芳元復興相(福島5区)は「地域性を考えれば浜通りが一つの選挙区になるのは良いこと」と一定の評価を示す一方で「復興の途上で定数削減には反対。今後の審議で意見を主張する」と述べた。

 立憲民主党の議員の受け止めはさまざまだ。

 金子恵美議員(福島1区)は「生活圏や歴史的、文化的な背景に配慮し、有権者が混乱しないよう留意が望まれる」と求め「真の再生を目指す県全体の代表として働き続ける」と冷静に受け止める。

 玄葉光一郎元外相(福島3区)は「長年活動してきた選挙区が分割される案で、身を引き裂かれる思いだ」と心情を吐露し「一定の覚悟はしていたとはいえ、すぐには気持ちの整理がつかない」と動揺を隠せない。

 小熊慎司議員(福島4区)は「1票の格差は是正しなければならない」と理解を示す一方、選挙区が広がる見通しとなり「有権者側からすれば政治家との距離が遠くなってしまうのでは」と懸念した。

 福島2区が地盤の馬場雄基議員(比例東北)は「人口比率で考えた際に改定案は妥当性がある」と理解を示しながらも「住民に身近な選挙制度かどうか問い直さなくてはならない」と強調した。

 県内首長、県南一様に戸惑い

 現行の選挙区から変更される案が示された県内の市町村長からは「地域性が考慮されていない」「地方の声が国政に届かなくなる」などと懸念の声が相次いだ。

 会津とともに新3区とされた県南地域の市町村長からは、一様に戸惑いの声が上がった。鈴木和夫白河市長は「県南は、歴史や地勢などから中通りに位置付けられ、地域性を考慮しているとは思えず違和感がある」とコメント。佐川正一郎矢祭町長も「人口減の中やむを得ないが、会津と東白川郡は文化や地域性が違う。住民の声が届きにくくなる心配がある」と指摘した。

 箭内憲勝泉崎村長は「気候、風土などの違いがある中、理解が得られるか不安だ。選挙離れや投票率低下につながらないか」、蛭田泰昭矢吹町長は「会津、県南を含めると地域が大変広く、課題や要望なども異なる」とそれぞれ懸念を述べた。

 関根政雄鮫川村長は「変更によって若者の選挙離れが加速するのではないか。経済や文化といった地域の実情を見ない限り、有権者の政治不信が促進する」と苦言を呈した。

 現行2区から新1区とされた本宮市の高松義行市長は「県北、県中とどちらともつながりのある地域だが、変更は驚いた。影響を注視する」と説明。二本松市の三保恵一市長は「広域行政を進める3市村(二本松、本宮、大玉)が県北の同選挙区とされたのは良かったが、選挙区削減で地方の声が国政に届きにくくなる懸念がある」と語った。押山利一大玉村長も「長い歴史の中で続いてきた区割りが変更となり、戸惑いと驚きがある。選挙区が変わり、どういう影響があるのか、考える必要がある」と話した。

 現行3区から新2区に変更された三春町の坂本浩之町長は「課題は地域で異なり、変更後の地区で課題を共有できるか懸念される」と訴えた。白石高司田村市長は「主権者の声を国政に届ける人を選ぶ重要な選挙で数合わせ的に頻繁に選挙区を変えるのはいかがなものか」と指摘。橋本克也須賀川市長も「小選挙区比例代表並立制や参議院のあり方、地方分権の実現など根本的な見直しがなければ、その場しのぎの帳尻合わせにすぎないのでは」と疑問を呈した。他にも「連携していた地域の分断になり、地方創生に逆行するのでは」(沢村和明平田村長)「1票の格差是正だけではなく、生活圏や地域のつながりを考慮してほしい」(添田勝幸天栄村長)などの声があった。岡部光徳古殿町長は「住民に大きな混乱を招かぬよう納得する丁寧な説明を」と求めた。

 浜通りは統合される案が示された。1区から移動する形となった新地町の大堀武町長は「復興は道半ばで、こうした時期の変更に一定の不安がある。地元の議員が減れば被災者の声が届きにくくなる可能性もある」と危惧した。

 門馬和夫南相馬市長も「地域の声が届きにくくなることが心配。1票の格差のみで区割りを変更する制度そのものの議論が必要と感じる」と指摘した。