【県議選・ふくしまの今(上)】変わる構図、高まる熱気

 
20年ぶりに選挙戦に入った大沼郡で候補者の演説に聞き入る有権者。人口減などの県政課題を巡って論戦が交わされている=2日午前、会津美里町

 大沼郡、20年ぶり選挙戦 石川郡、見据える衆院選

 ■政策論争期待

 20年ぶりとなる選挙戦に入った大沼郡。県議選が告示された2日、朝方の雨が上がった中で始まった候補者の第一声を聞いた会津美里町の男性(69)は「これまで県政は少し遠い存在と感じていたが、地域のための県の仕事も課題もたくさんあるんだと、改めて考えるきっかけになった」と政策論争の高まりに期待を寄せた。

 大沼郡や12年ぶりの選挙戦となった河沼郡は、県内でも特に人口減少が深刻な地域だ。有権者からは強い危機感とともに、若者の雇用の創出や地域経済の活性化を望む声が多く聞かれる。両郡はいずれも自民現職と立憲民主新人の一騎打ちとなり、県が長年、重点課題と位置付ける人口減対策などを巡って論戦が交わされている。

 久しぶりの選挙戦に高ぶる各陣営の後方では、県議会最大会派の自民と、立民議員らで構成する第2会派の県民連合が勢力拡大を狙い攻防を繰り広げる。来年で10年を迎える内堀県政で、ともに「県政与党」を掲げる両会派だが「会津の1人区の勝敗が今後の勢力図を大きく左右する」と見る向きは多い。自民、立民の両党県連も両郡を重点区の一つと定め、地元国会議員や無投票当選となった県議らが連日選挙区入りするなどてこ入れに躍起だ。

 ■新区割り影響

 衆院小選挙区の区割り改定後初めての県議選で、次期衆院選をにらんだ思惑も絡む。旧福島4区から3区に変わった会津で久々の選挙戦となった背景には、新人候補の擁立に奔走した国会議員の動きがあり、ほかの選挙区でも党幹部が相次いで応援に入るなど地方選では珍しい光景がみられる。

 旧福島3区から2区に変わり、自民と無所属の新人同士が1議席を争う構図となった石川郡でも、ともに閣僚経験のある地元選出議員がしのぎを削る。自民県連会長の根本匠元復興相は党公認候補の選対本部長を務め、候補者と共に郡内を精力的に巡る。告示日には郡内の全町村で街頭演説に立ち会いマイクを握るなど、新たな地盤での支持拡大を重視。立民の玄葉光一郎元外相は現職県議の後継として出馬した無所属候補の総決起大会に駆け付け、告示後も郡内を重点的に回る。陣営は「貴重な1人区の議席。絶対に落とせない」(立民県連幹部)と息巻く。

 長く無投票が続いた地域での選挙戦や衆院の区割り改定など、さまざまな「変化」を伴う今回の県議選。選挙戦となったある選挙区の陣営の一人は「国政のうねりに巻き込まれるのでなく、若者が関心を持つきっかけになればいい」と投票率の低下が続く県議選への有権者の「変化」にも期待する。

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 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から4回目となる県議選が告示された。選挙戦では、鮮明になってきた県政の課題や新たな区割りで行われる次期衆院選も絡み、これまでにはない変化の兆しも見え始めた。各陣営や有権者の声から福島の今を探る。