【県議選・ふくしまの今(中)】将来占う復興転換期

 
エフレイの施設予定地。将来は研究者や企業・大学関係者らが集まり、広域に効果が波及する見通しだが、具体的な姿はまだ見えない=浪江町

 エフレイ効果は未知数 除染土議論本格化へ

 「若い人が増え、この数年で町の雰囲気は随分変わった。ただ、週末に人がいなくなるのは今も変わらない」。浪江町の道の駅に勤務する引地裕子さん(50)は実感を口にする。

 相馬市出身で、2018年に仙台市から同町に移り住み、まちづくり会社で地域再生支援に携わってきた。東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域も担当し、先行きを注視する。

 同区域に設けられた特定復興再生拠点区域(復興拠点)は昨年から段階的に避難指示が解除され、今月下旬にも最後の解除を迎える。福島民友新聞社のまとめでは、拠点の居住者数は浪江など6町村で計約320人。解除後5年の目標7960人には遠く、拠点以外を含む帰還ペースも鈍化傾向にある。

 現状打破の期待を背負い、福島国際研究教育機構(エフレイ)が4月に設立した。目指すのは、世界最先端の研究を軸とした「創造的復興の中核拠点」。研究者や企業、大学などが集積し、浜通りに波及効果を生むとされるが、将来像は未知数の部分も多い。

 引地さんは「農業や漁業など元々の地域性をベースにまちづくりが進み、いつかエフレイが町民の自慢になったらいい」と望む。

 ■三たび無投票

 309平方キロの帰還困難区域の大半を抱え、第1原発が立地する双葉郡選挙区は、3回連続の無投票となった。こうした中、本県は政治が県全体の復興を左右する重要局面に入る。

 第2期復興・創生期間(21~25年度)が折り返しを過ぎ、終了後の予算確保は県政の最重要課題になりつつある。国は予算規模や期間を示しておらず、特別会計の枠組みが続くかどうかも読めない。県は24年度の議論入りを見込む。

 除染で出た土壌の最終処分に向けた議論も本格化する。環境省は施設の構造や面積、コストなどを検討し、24年度に複数の最終処分シナリオを作成する。ただ国が掲げる45年の県外最終処分完了に向けた候補地は依然として白紙だ。選挙戦では復興政策も大きなテーマの一つとなっている。次の任期は、本県復興の将来を占う4年間になる。

 ■防災施策望む

 19年以降、本県は東日本台風と2度の県沖地震を経験した。気候変動で大規模災害が頻発化する中、県土強靱化(きょうじんか)や避難行動を取る県民意識の醸成など、防災の施策も重要性を増す。

 いわき市内郷地区は9月の記録的豪雨で、洪水ハザードマップの浸水想定区域から外れた多くの住宅が洪水被害に遭った。将来への不安から、地区を離れる決断をした住民もいるという。

 自宅が床上浸水した同地区の会社員鈴木寿志さん(49)は「災害対策は地域のつながりにも影響している。経験のない災害も見越した十分な備えを、政治の現場で進めてほしい」と求めた。