いわき市、南部票の争奪激化 福島県議選・終盤の情勢

 
▽党派の略称 自=自民党、立=立憲民主党、共=共産党、公=公明党、維=日本維新の会、れ=れいわ新選組、諸=諸派、無=無所属。四角の枠囲いは推薦

 任期満了に伴う県議選は12日の投開票に向けて終盤に差しかかり、選挙戦となった10選挙区では各候補者が訴えの声を一層強めている。定数10に最多の13人が立候補する激戦となったいわき市では、告示直前に現職が立候補を辞退した影響などから各陣営が票を読み切れないままの戦いを強いられる。

 現職9人、新人3人、元職1人が立候補、元職や新人が世代交代をうたい現職に挑む構図。2019年の前回県議選でトップ当選した自民現職坂本竜太郎の出馬辞退により、地盤としていた南部を中心に票を巡るせめぎ合いは激しさを増している。告示直前の構図の変化で票読みの見直しを迫られた陣営もあり、ある陣営は7千票台とみていた当選ラインを千票引き上げた。「8千票を取れない候補から落ちていく」。陣営関係者の言葉には危機感がにじむ。

 自民は現職3人と新人1人で現有4議席の維持を目指す。最終盤に向けていずれも現職の矢吹貢一が平など北部、鈴木智は小名浜や泉、青木稔は平、常磐と各自の地盤を着実に固める。新人の木村謙一郎は北部を巡り、各漁港での演説も予定する。各候補が南部入りする際には、坂本が並んでマイクを握る一幕もある。ただ、各陣営からは「元々地盤がある地域ではない。実際にどれだけの票が入るか...」との声が漏れる。

 "南部票"の奪い合いには非自民の陣営も躍起だ。元々勿来地区が地盤の陣営幹部は「坂本の支持者は自民関係者だけではない。積極的に狙う」と息巻く。今回公認候補を見送った社民党票の行方も含め、しのぎを削り合う。

 立憲民主現職の古市三久は党支持層への訴えを続けてきた。終盤は地盤の平北部を中心に票固めを図る。

 共産は党幹部を応援演説に投入。県議会の交渉会派維持へ、2議席の死守は不可欠だ。北部に注力してきた吉田英策は豪雨被害を受けた内郷に重点を置き、宮川絵美子は地盤の南部中心地を強化する。

 公明はいわき市を最重点区に設定しており、党代表が現地入りするなど2議席確保に全力を挙げる。真山祐一は地元内郷を中心に水害対策を訴え、安部泰男は最終盤では勿来、植田地区を中心に遊説する。

 維新の元職鳥居作弥は地盤の勿来や平、小名浜に注力。終盤は南部で攻勢を強め、党支持層にも訴える。

 無所属の西丸武進は個人演説会を強化し、終盤は常磐や小名浜を中心に遊説する。電力労組やいわき地区連合の支援を受ける安田成一は企業や郡部を巡り、終盤は地元中央台を重点とする。れいわ推薦の新人山口洋太は、拠点の四倉を中心に北部の住宅地などを遊説し支持を訴えている。(敬称略)