結論時期迫る!タンク貯蔵の処理水『処分法選択』 福島第1原発

 
放射性トリチウムを含む処理水などが保管されるタンク群。8月22日現在、約115万トンが保管されている

 東京電力福島第1原発では、汚染水を浄化した後に残る放射性トリチウムを含む処理水が増え続けている。国の小委員会は処分方法や第1原発敷地内でのタンクでの長期保管について議論を重ねるが、タンク建設の敷地には限界もあり、結論の時期が迫っている。

 早ければ22年6月

 「永久に貯蔵し続けることは不合理」。「敷地が足りないからといって処分の理由にはならない」。8月9日の小委会合で長期保管の議論が始まった。昨年8月の公聴会での要望を受けた議論だが、結論は持ち越され、処分方法の検討も含めて着地点は見えない。

 処理水などは8月22日時点で約980基のタンクに約115万トン保管されている。東電は保管計画に基づく137万トンの容量に、早ければ2022年6月にも達するとの試算を公表。タンクの大型化で容量を増やすことや敷地外への移送、第1原発の敷地拡大などは困難との見方だ。

 第1原発敷地内には使用済み核燃料や溶融核燃料(デブリ)を一時保管する施設も必要となる。このため小委では、恒久的な保管に否定的な意見が大勢で、期限を決めて保管する案などが出された。

 「海洋放出」風評懸念

 原発事故後、第1原発では建屋内に流入する地下水が汚染水と混じり、それを多核種除去設備(ALPS)で処理した水が増え続ける。1~4号機周辺の地盤を凍らせる「凍土遮水壁」などの対策で、汚染水の1日当たりの平均発生量(年間)は、完成前の約490トンから18年度には約170トンまで減少したが、完全な止水は不可能だ。

 小委は大気放出や地下埋設など五つの処分方法を検討。16年には希釈して海洋放出するのが最も短期間、低予算との報告書をまとめた。原子力規制委員会も科学的な安全性から、希釈した上での海洋放出に容認の立場だが、昨夏の公聴会では風評被害への懸念から批判が集中。処理水には他の放射性物質も残留しており、再浄化が必要な可能性もある。

 十分な議論と説明

 こうした議論に内堀雅雄知事は「国、東電は、環境や風評への影響を十分に議論した上で、国民や県民に丁寧に説明しながら慎重に検討を進めてほしい」と求める。専門家からはトリチウムに関する正しい理解を広めるため、「国民的議論」が必要との指摘もある。

 8月下旬には、韓国が日本に処理水の処分方法の説明を求めるなど外交問題化する動きもあり、県も状況を注視する。第1原発の状況や地元住民との合意形成を踏まえ、処理水を巡る議論の道筋をどう付けるか。国や東電は難しい判断を迫られている。