新型コロナウイルスワクチンについて。その8

 

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。公立藤田総合病院(国見町)副院長で脳神経外科医の佐藤晶宏先生のお話です。
新型コロナウイルスワクチンについて8
公立藤田総合病院
佐藤昌宏先生
福島県立医科大学医学部大学院卒、医学博士号を取得。同大学附属病院から総合南東北病院、福島赤十字病院、原町市立病院等にて勤務し1996(平成8)年4月から公立藤田総合病院脳神経外科、2008年4月より同病院副院長。専門は脳血管障害の診断と外科治療。日本脳神経外科学会専門医・指導医、福島県立医科大学医学部臨床教授。
 
 

   

 今回は新型コロナウイルス感染症についてお話をする予定でしたが、新しい新型コロナウイルスワクチンの話題がありますので、今回も厚生労働省からの記事を参考に新型コロナウイルスワクチンについてお話をします。

1.新型コロナワクチン接種後の心筋炎、心膜炎について

 心筋炎とは心臓の筋肉自体に炎症が起こり、心筋本来の機能が失われて、ポンプである心筋の収縮不全や不整脈を生じる疾患です。また、心膜炎とは心臓を包んでいる硬い心膜の炎症です。胸の痛み、特に深呼吸時に強くなるのが特徴です。新型コロナウイルス感染症を発症した場合に、心筋炎、心膜炎になることがあります。
 ただ、新型コロナウイルスワクチンを接種した後にも、副反応としてごくまれに心筋炎、心膜炎を発症することがあります。その頻度は、新型コロナウイルスに感染した場合より、ワクチン接種後に心筋炎、心膜炎になる方が低いことが分かっています。
 これらはファイザー社製ワクチンでも武田/モデルナ社製ワクチンでも起こっていますが、その頻度は武田/モデルナ社製ワクチンが多いようです(図1)。また、10代、20代の男性が他の年代より頻度が高い傾向にあります(図2)。そのため、厚労省は10代、20代男性で武田/モデルナ社製ワクチンを予約した人や、1回目すでに武田/モデルナ社製ワクチンを打った人でもファイザー社製ワクチンを希望すれば、打てるようにしました。
 では、若者はワクチンを打たない方がよいのでしょうか。日本で接種される新型コロナウイルスワクチンは、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する効果と重症化を予防する効果が報告されています。実際、感染が増加した2021年夏には若い年代にも感染者が増加し、重症化した人や後遺症に悩んでいる人もいますので、厚労省としては若い年代の人にもワクチン接種を推奨しています。。

心筋炎、心膜炎の症状

 ワクチン接種後4日程度の間に出現する胸の痛み、動悸、息切れ、むくみなどが主な症状です。ワクチン接種して、男性、特に若い人でこういった症状がある場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。心筋炎、心膜炎と診断されれば、一般的には入院治療が必要ですが、多くは安静によって自然回復するといわれていますので、過度な心配は不要です。 2.追加接種

 11月4日時点での新型コロナウイルスワクチンの接種状況は、1回目接種が終わったのが、9848万人、率にして77・8%、2回目接種が終わったのが、9255万人、73・1%になりました。そのためか、10月から全国の感染者数が減少しました。しかし、諸外国において、2回新型コロナワクチンを接種した場合であっても、接種後の時間の経過とともに、ワクチンの有効性や免疫原性が低下することが報告されています。一部の国では、2回のワクチンを接種後、一定の間隔をおいて、追加接種を実施する方針が打ち出されています。  例えば、ファイザー社製ワクチンの感染予防効果の推移に関しては、2回目接種後6カ月までの追跡調査では、全世代において経時的に低下し、2回目接種後6カ月では50%前後まで低下したとの報告もあります。また、入院予防効果や重症化予防効果も接種後6カ月までは保たれるとの報告もありますが、60歳以上に関しては、経時的に重症化予防効果が減少するとの報告もあります。また、2回接種より3回接種後で高い免疫原性(中和抗体価)の増加が確認されたなどの報告もあるため、3回目の接種を厚労省も勧めるようになりました。  諸外国では、追加接種の対象者として、現時点では高齢者や重症化リスクの高い人、医療者等ウイルス暴露のリスクの高い人を対象とする国・機関が多いですが、対象者は継続して拡大することが検討されています。また、特に対象者を限定していない国・機関もあります。  以上から、新型コロナワクチンには一定の感染予防効果があると考えられますが、感染予防効果は発症予防効果・重症化予防効果に比較して早期に低下すること、また、高齢者においては重症化予防効果についても経時的に減少する可能性を示唆する報告も挙げられています。これらのことを踏まえ、初回未接種者への接種機会の提供を継続するとともに、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供することについて議論されており、11月11日には厚労省によって18歳以上を対象にファイザー社製ワクチンが特例承認されました。

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 来月は新型コロナウイルス感染症についてお話します。

月号より