【いわきFC・JFLへの軌跡】 走り勝つ戦術徹底 勝負強く選手進化

 
優勝のトロフィーを掲げて喜ぶいわきFCの選手ら=24日、Jヴィレッジスタジアム

 サッカーの日本フットボールリーグ(JFL)昇格を確実にしたいわきFCは24日、全国地域チャンピオンズリーグ(地域CL)最終節で福井ユナイテッドFCと1―1で引き分け、初の優勝を果たした。本格始動から4年目、新戦力台頭と勝利へのこだわりを前面に出した戦いで新たな姿を見せた今季。JFL昇格を果たしたいわきの進化を探る。

 ■地域CL初制覇

 「全員で勝ち取った昇格だ」。リーグ戦と地域CLを無敗で終えたいわきの田村雄三監督(36)は今季をそう総括した。主戦場が東北社会人リーグ1部に変わった今季、大きな変化が生まれていた。その一つが勝利へのこだわりだ。JFL昇格が最重要課題の今季。昨季まで追求してきた観客が楽しいと思えるサッカーに加え、掲げたのが「勝利への執念」という言葉だった。

 そのため徹底したのが奪ったボールを素早く前につなぎ、得点を奪う攻撃的サッカー。武器のスタミナと身体能力を生かして90分間、高い運動量を保ち、相手を問わず最後まで勝利を諦めずに得点を狙う。「走り勝つ」が合言葉になった。

 この戦術が地域CLで実を結んだ。全国社会人選手権王者のFCティアモ枚方(関西リーグ1部)から4点を奪う快勝で予選ラウンドを突破すると、決勝ラウンド3試合は、いずれも相手の運動量が落ちた後半に得点。自らのスタイルを貫き、頂点に上り詰めた。

 ■新戦力、刺激剤に

 さらに新戦力がチームに変化をもたらした。J3福島ユナイテッドFCの中盤の核だった前田尚輝(23)や高校選手権で活躍したバスケス・バイロン(19)ら13人を新たに獲得。「勝つだけではなく、選手を育てることが大切」(田村監督)と育成にも力を注いだ。リーグ戦では交代枠を駆使して多くの選手に経験を積ませ、さらに試合に帯同する専属のアナリストが、映像を基に一人一人の試合での動きを分析、質の向上につなげた。福島でパスの供給役を担っていた前田は、いわきで積極的な攻撃参加が目立つようになった。前田は「前より得点への意識が高くなった」と語る。

 新戦力に刺激を受けた既存の選手たちの活躍も目立った。4年目の吉田知樹(21)は今季、全社でチーム最多の4得点。昨年は無得点だった大会で、元々武器としていたドリブルだけではなく連係からの抜け出しやヘディングでも得点を重ね、1年間の進化を体現した。吉田知は「加入当初は思うようにプレーできなかったが、今は得点に絡む動きができている」と自信を深める。個の進化がチームの成熟に結び付き、JFL昇格を大きくたぐり寄せた。