【いわきFC・J2に挑む】J1へ...「躍動の舞台」地域と共に

 
来春の完成を目指して改修が進むいわきグリーンフィールド。J3基準にとどまるため、スタジアムの確保が課題となる=いわき市

 J2昇格を決めたいわきFCにとって当面の懸案はスタジアム問題だ。県内にはJ1、J2の基準を満たすホームスタジアムがないため、いわきは将来的な整備をリーグと約束する「例外適用」の規則に基づいて昇格した。チームを運営するいわきスポーツクラブが整備を主導することになるが、いわき市がいち早く協力姿勢を示すなど好材料も増えてきた。J1を目指す選手が躍動する舞台を整えるための道筋を付けられるかどうか、チームと応援する地域の力が問われる。

 第1段階として2025年6月までに、基準を満たすスタジアムの整備計画の提出が求められる。現行のJ1基準が定める収容人数は1万5000人規模(椅子席1万席以上)で、新設または大規模改修するスタジアムには原則として観客席を覆う屋根や、スコアボードに使う大型映像装置の設置も必要となる。

 来季のホームスタジアムいわきグリーンフィールド(いわき市)では、市が来年3月の工事完了を目指して改修を進めているが、改修後に満たすのはJ3基準であり、J2での使用は例外適用期間中(30年シーズンまで)に限られる。観客席数は約2300席から約5000席に膨らむが、さらなる増設は難しい状況だ。

 市の担当者は「建て替えやほかの場所への建設が基本となるだろう」と話す。

 国内のスタジアムに目を向けると、建設費は100億円以上が相場だ。J3ギラヴァンツ北九州の本拠地ミクニワールドスタジアム北九州(北九州市)は建設費が約99億円、J1ガンバ大阪の吹田スタジアム(大阪府吹田市)やJ2ブラウブリッツ秋田が整備している新スタジアムは共に約140億円で、200億~300億円規模の施設もある。

 いわき市は、国への補助金申請などで整備に協力する方針だが、建設費を賄うには地元企業など地域の経済界の協力も欠かせない。

 いわき商工会議所の小野栄重会頭は「市民全体の理解が必要。運営母体や設置場所などを話し合う協議会をつくりたい」と語った。

 将来的な基準見直し、チェアマンにじませ

 「スタジアムがどのくらいのサイズで、どのようなものがいいかはそれぞれ。時代の流れや地域差を考えていかなければならないと強く感じる」。Jリーグの野々村芳和チェアマンは福島民友新聞社の取材に、将来的に基準を見直す可能性をにじませた。いわきの計画提出までに基準が変われば、スタジアム問題を解決する追い風になりそうだ。

 とはいえ、計画の提出期限まで残り約2年7カ月。チームや行政、経済界、地域住民が一体となってスタジアムの在り方を話し合う場づくりが急がれる。

いわきFCのJ2昇格を受けたスタジアム整備の流れ