【飯坂線100年】親子2代、憧れの仕事

 
父と2人で飯坂線の列車を運行した思い出がある三浦さん。記念列車を前に「地域の支えがなければこの日を迎えることはできなかった」と感慨に浸った=13日、福島市

 「地域のお客さまの支えがなければこの日を迎えることはできなかった。感謝の気持ちでいっぱい」。福島交通飯坂線の運転開始から100年の晴れの日を迎えた13日、鉄道部長の三浦賢一さん(54)は、福島駅に到着した記念列車を見つめて感慨に浸った。

 飯坂線は最盛期に比べて乗客数が減ったものの、時代のニーズに合わせて路線の利用促進や沿線活性化に取り組んできた。桜水駅に併設する桜水車両基地で冬期間を除き月1回ほど運転体験会を開催。参加者は老若男女を問わず、首都圏からもリピーターが訪れる人気ぶりだ。要望に応じて車両を貸し切っての音楽ライブや結婚式なども行った。

 2022年には曽根田駅の駅舎を改装、外観が開業当時のレトロな姿に様変わりした。1世代前に運行していた7000系車両を休憩所やワーキングスペースとして駅構内に設置し、列車を待つ利用客や学生らが集う場となっている。

 災害に強い路線に

 飯坂線は強風や大雪でも安全を確保できる限り運休しないため、利用者の間では"最強説"が流れる。目の行き届くコンパクトな路線を強みに、点検や雪かきなど社員の迅速な対応で影響を最小限にとどめているためだ。13年前の東日本大震災時も、発生からわずか2日後に運行を再開する"最強"ぶりを見せた。

 列車の保守点検や修理などを担当する車両区長の鑓水(やりみず)正樹さん(52)は、安全な運行のために日々の業務で目を光らせる。「事故を起こさないことが一番。その上で、お客さまには快適に乗ってもらいたい」

 期待や絆、思い乗せ

 100年の節目を迎え、三浦さんは車掌を務めたある日を思い出した。その時の運転士は、父の故正秋さん。父の背中を追いかけて一緒の道に進んだだけに、2人で同じ車両を運行する「親子共演」を果たした当時を「信用して業務を任せてくれていたと思う。憧れの仕事を父と2人でできて誇らしかった」と振り返る。

 地域の期待や親子の絆―。さまざまな思いを乗せて、次の100年へと向かう飯坂線。末永く愛される路線づくりに向け、三浦さんは未来像を描く。「100年は区切りではなく通過点。これからも沿線の足として、便利で快適な『いい電』を提供していきたい」

 飯坂線は地域と共に、きょうも走り続ける。

曽根田駅構内に設置された7000系車両曽根田駅構内に設置された7000系車両。休憩所などとして列車を待つ利用客らが集う

 桜水車両基地 飯坂線桜水駅に併設された車両基地。現在運行している全14両の車両の日常保守や各種点検作業を行う。事前に予約すれば見学も可能。月に1回程度、車両基地内の線路を使った1000系車両の運転体験会も開催している。

 この連載は多勢ひかるが担当しました。