「罪と正義」問うミステリー 映画・罪と悪、作品への思い語る

 
作品や福島について語った(左から)斉藤勇起監督、守屋茜さん、高良健吾さん

 罪の真実と正義の在り方を問うミステリー映画「罪と悪」(斉藤勇起監督)が福島市のフォーラム福島で公開されている。4日に舞台あいさつで同館を訪れた主演の高良(こうら)健吾さんと共演の守屋茜さん、斉藤監督が、作品や福島への思いを語った。

 幼なじみ3人、20年後

 映画は、3人の幼なじみが中学時代に背負った罪と20年後に起きる新たな殺人事件の行方を描いている。

 高良さんが今回演じた主人公の春は、闇の仕事も請け負う建設会社の社長。悪役から好青年まで作品ごとに違う顔を見せる高良さんの魅力が光る役柄だ。「家族には優しかったり、行き場のない不良たちを雇ったりしている一方で、救った人を使って悪いこともしていて、一概に『いいヤツ』ではない。分かりやすく『ワル』を演じることもできるが、今回は表と裏を生きているところを演じたかった」と、二面性ある役に込めた思いを語る。

 高良さんが本県を訪れるのは、福島市の旧広瀬座で2018年に行われた映画「カツベン」(2019年)の撮影以来6年ぶり。当時もフォーラム福島を訪れ、上映中だった別の映画の舞台あいさつに登場した。本県の印象については「『アンダー・ユア・ベッド』(19年)や『彼女の人生は間違いじゃない』(17年)など、撮影で訪れることも多く、映画に対して温かいまちだと感じています」

 守屋茜さん、妻役「堂々と」

 春の妻・清美は、映画出演が今回初めての守屋茜さんが演じた。実年齢より10歳ほど年上の役だったため、堂々と、強い演技を心がけたという。いわき市には祖母の家があり、本県とゆかりが深い。「よく祖母の家に遊びに来ましたし、あんこう鍋も食べました。いわきは好きなまちです」と笑う。

 「消化しきれない作品」

 斉藤監督にとっては、本作が初の監督作品。これまで郡山市出身の映画監督広木隆一さんなど各監督の下で経験を積んできた。思春期や青春時代には大人がつくる世界の不条理に憤りを覚えていたといい、それらが本作の設定にもつながっている。「答えが出しにくいテーマだと思う。『罪イコール悪』なのか? 罪を犯したら悪なのか? 悪人でも罪を免れている人もいるのでは? これらはどこにでも起こりうること。普遍的な話にしたかった」

 映画を見た人の感想がインターネット上に書き込まれているのを見て、さまざまな受け止め方をされていることに面白さも感じている。「すぐには消化できない作品だと思うが、いつか消化してもらえれば、作ったかいがある。10年後に心に残っている一本になってほしい」(須田明日香)

          ◇

 【「罪と悪」あらすじ】14歳の少年正樹が殺され、遺体が橋の下で発見された。正樹の同級生の春、晃、朔は、犯人と確信した男の家に押しかけ、もみあいになる。男は一人の少年に殺され、家に火が放たれた。20年後、刑事になった晃が町に戻る。朔と再会してほどなく、ある少年の死体が橋の下で見つかった。捜査の中で再会した晃と春。それぞれが心にしまっていた過去の事件の扉が開いていく。