彫刻に込めた復興の願い 本宮の88歳・遠藤徳さん、精力的に創作

 
作品制作に熱を入れる遠藤さん。「彫刻は私に取って生きる力で、生きる喜び」と語る

 本宮市の彫刻家遠藤徳(のぼる)さん(88)は「ふるさとへの思いや復興の願い」をテーマに創作活動に励んでいる。「無機質な石や木、粘土の素材に『願いや叫び』などの命を吹き込み、形にすることが彫刻だ。狭い空間で思いをどのように表現できるか。制作中は胸が躍る」と魅力を語る。

 夢中で粘土と格闘

 幼い頃から絵を描くのが好きだった。芸術の世界で生きていくことを夢見た時もあったが、きょうだいが多いことから諦め、教職員の道を選んだ。福島大学芸学部卒業後、県内の小中学校で美術教諭として勤務。仕事の傍ら、洋画などの制作に取り組む一方、同僚教諭から誘われ、彫刻作品制作にも挑戦した。「新鮮で圧倒的な作品に魅了された。(同僚教諭の指導を受け)夢中で粘土の塊と闘っていた」と懐かしむ。

 彫刻の世界に26歳から関わり、これまでに100体以上の作品を生み出してきた。60年以上の活動の中で、転機となったのが東日本大震災と東京電力福島第1原発事故だった。「震災や原発事故でふるさとを追われた人がいる。被災者のためにできることはないか」。震災で遠藤さんの作品の一部も壊れたが作品を修復し、被災者支援として個展を開催。復興への思いを込めて制作した作品「古里・帰還の日」は、2017年の改組新第4回日展で特選を受賞し、現在は本宮市のみずいろ公園に展示されている。

 心温まる作品作る

 遠藤さんは日展で2度特選を受賞し、日展の準会員になっている。被災地への願いを作品に込める一方で、地元への貢献にも取り組む。改修工事を進める本宮市白沢ふれあい文化ホール外構に設置するため、英国の子どもたちが楽しそうに遊ぶ銅像などを制作中だ。遠藤さんは「被災地の復興を作品を通して訴えながら地元の発展に向けて心温まる作品を制作していきたい」と笑顔を見せた。(斎藤優樹)