【県都・福島の針路】激戦の勝因 木幡氏、他候補上回る組織力

 
花束で祝福される木幡氏=19日夜、福島市南町の選挙事務所

 19日に投開票が行われた福島市長選は、初当選した前復興庁福島復興局長の木幡浩氏(57)が現職小林香氏(58)ら3候補に1万票以上の差をつけた。市議の約半数や政党、団体などの後押しを受け、知名度不足という序盤の不利を組織的な選挙戦で終盤に挽回、小林市政の批判票も取り込み、有権者の支持を得た。

 「知名度ゼロからのスタートだったが、中盤以降は市民の大きな期待や手応えを感じることができた」。当選から一夜明けた20日、木幡氏は安堵(あんど)の表情で選挙戦を振り返った。震災後2度目の市長選は現職小林氏のほか、元県議の桜田葉子氏(60)、幼児園長法井太閤氏(72)の計4人が立候補する2005(平成17)年以来の激戦となった。

 木幡氏は民進、社民、自民など現職と対立を深めていた市議会有志の立候補要請を受け、7月に復興庁福島復興局長を辞して出馬を表明した。当初、木幡氏支持に傾いた自民党福島市総支部が元同党県議の桜田氏出馬で自主投票を決めるなどの動きもあったが、市議の約半数と地元選出県議の一部による支持、さらに民進党や社民党、連合福島などの支援も受け、他候補を上回る組織を築いた。

 序盤は知名度に勝る小林氏が選挙戦をリードしたが、遊説や個人演説会などで総務官僚として岡山県副知事などを務めた実績をアピールするとともに、組織をフルに活用して徐々に支持を拡大、勢いを付けた。

 勢いがさらに増した終盤、組織の引き締めを強化。木幡自身も「スピードと実行力」を強く訴え、現市政に閉塞(へいそく)感を抱く有権者の批判票を取り込んだ。木幡氏を支援した同市議会前議長の高木克尚市議(62)は「ゼロからの厳しい選挙だったが、いろいろな立場の市議が一つに集まったことが勝因になった」と分析。前回を1.18ポイント下回った47.92%の投票率も「組織の充実した木幡氏有利に働いた」(木幡陣営幹部)との見方もある。

 ただ激戦の中で有権者の投票先は割れた。低投票率もあって木幡氏の得票は全有権者の2割を下回った。他の候補者への投票数を合わせると投票総数の半数を上回っており、今後の市政運営には厳しい目も向けられる。

 木幡氏は20日朝、ウェブ上に動画を公開。ブルーのシャツにピンク色のネクタイを身に着け、選挙戦の感謝を述べた。いずれも選挙で戦った他陣営のイメージカラー。「愛する福島の新しい未来を、市民総参加で一緒につくっていきましょう」と呼び掛けた。