【福島県議選・有権者の視点】生活再建へ台風被災者「支援策を」

 

 「選挙にもお金はかかるが、被災地の復旧にも回してほしい」。台風19号の大雨で自宅が浸水した須賀川市の女性(55)は選挙の重要性を理解しつつも複雑な心境を打ち明けた。2人の死者を出した同市館取町。一時、住宅街にあふれていた災害ごみの回収は進んだものの、舞い上がる粉じんの中、被災者の生活再建への奮闘が続いている。

 定数3の須賀川市・岩瀬郡選挙区には現職2人、新人4人が立候補、8年ぶりの選挙戦となった。一方で同市では被災の影響が残り、住宅被害罹災(りさい)証明書の交付もこれから。復興と災害に強い県土づくりなどを訴える候補者と、生活するのに手いっぱいの有権者との間には隔たりもみえる。

 女性は「選挙ポスターの掲示板を見ても『ああ選挙か』ぐらいにしか思わない」と話す。避難所に身を寄せる別の女性(70)は「台風19号への対応も(選挙の)焦点になるだろうが、くたくたで1票を投じられるかどうか」と歯がゆさをにじませた。

 定数10に12人が立候補したいわき市選挙区。同市平の自宅が浸水した看護師の住民(65)は「住宅の確保を第一に支援策を考えてほしい」と求める。住民は「帰る場所がない。住める場所も確保できるかどうか」と切迫した状況を口にする。現在は武道館に避難、自宅の片付けをしながら借り上げ住宅などへの申し込み手続きをしている。「被災者の声に耳を傾けて」と被災者に寄り添った政治を求めた。

 同市の会社員男性(29)は「個人的には選挙どころではないというのが正直なところだ」とこぼす。浸水した勤務先の復旧作業がようやく一段落した。取引先などから会社に届けられる日用品などを必要とする被災者に分けており「必要な情報や物資を得られる場所が分からない」との声を聞く。男性は災害時の情報がくまなく得られるような仕組みづくりが必要と語る。

 農地が被害に遭った鏡石町の男性(45)は投票に行くつもりだ。「先行きが不安だからこそ政治の力が重要。候補者の被災地に対する動きも判断材料になるだろう。こんな時だからこそ、1票を考えたい」

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 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故以降、3度目となる県議選が告示された。台風19号の被害が注目され、今後の4年間を託す県議を選ぶ選挙そのものの争点は見えづらい。有権者の思いを、県議選の課題とともに探った。